捧げ物
□嘘
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仮面の軍勢がねぐらとするとある倉庫。
ご近所迷惑も甚だしい言い争う声が四方八方に反響していた。
「やっぱり喜助お前、夜一の奴が好きなんやな」
「だ〜か〜ら〜、何でそんな風に繋がるんスか!!」
背後に暗雲を立ち込めて睨み付けてくる平子に、喜助は一瞬怯む。
平子はそれを見逃さなかった。
「夜一なんぞに、ヤらせはせん!ヤらせはせんぞ!!」
「貴方の思考回路はどうなっているんですか?!」
飛びかかってくる平子を止めることは出来ず、喜助は押し倒された。
まわりにはいつもいるはずの面々は留守だった。
そもそもの原因は平子を除く仮面の軍勢の嘘から始まった。
『喜助が夜一に惚れたらしい』
冗談にしては質が悪い。
だが、嘘を吐いた本人達はまさか本当に真に受けてしまうとは夢にも思わず、留守番の平子を残し、二泊三日の温泉旅行へと行ってしまった。
その直後、タイミング悪くやって来た喜助と平子は鉢合わせ、口論となり今現在の状況に至っている。
「ちょっと落ち着きましょうよ!平子さん!」
「落ち着けるか!」
押し倒され、そのまま地面に両手首を拘束される。
真っ青な顔をして喜助は平子を見上げた。
「離して下さい!」
「嫌や!夜一なんぞにやるかいな!お前は俺のや!!」
「僕は本当に潔白なんですってばっ!それに夜一さんに手を出したらどうなるか、分からない貴方じゃないでしょう!!」
喜助の叫びに平子の手が止まる。
夜一とも付き合いのながい平子は、彼女に粗相をしようとした男達の哀れな末路を幾度となく目撃していた。
「……確かに」
「でしょう!!」
「いやしかし、お前には意外とガード緩そうやし」
喜助の上に馬乗りの状態のまま考え込む。
そんな平子を見ていた喜助の表情が変わった。
「……信用されていないんですね、僕」
「ん?」
「平子さんは僕のこと信じてくれないじゃないですか……」
はらはらと涙を流す喜助に、平子は血の気が失せ、後悔の念に苛まれた。