捧げ物

□健康
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身体に気をつかった生活がなされていない事が多い現代。
ここに、一人の男が恒例の健康診断にものの見事に引っ掛かった。
彼の名はデスマスク。
聖闘士の最高位、黄金の闘士である。

「あなたのだらしなさには頭が上がりませんね。雑兵含め、健康診断に引っ掛かったのはあなたとミロだけですよ」

白衣を纏った医者。
もとい、牡羊座のムウの呆れた物言いに、デスマスクは軽く舌打ちした。
カルテを捲り、一通り目を通し終わると、掛けていた眼鏡を外しデスマスクの方へと向き直る。

「検査入院して頂きますよ。デスマスク」

顔中に嫌だと言う言葉を張りつけ、睨みをきかせる。

「あ?」

その様は容姿も相まってイタリアンマフィアそのものであるが、状況や下手な脅しをかける様子はまるでチンピラであった。
対してムウは羊のような柔らかい微笑みを浮かべるが、何処か含みのある笑みである。
静かな攻防を繰り広げていた二人には、部外者が一人忍び込んでいることに気がついていなかった。
部外者は二人の背後でさも当たり前のようにムウに声をかけた。

「入院期間はいつまでだ?」

不意をつかれたデスマスクは椅子からずり落ちそうになり、ムウは目をぱちくりと瞬くと、再度微笑んだ。

「テメェ何処から沸いて出やがった!」

勢いよく立ち上がった弾みで椅子が後ろへひっくり返る。
が、お構いなしに本人を置き去りにして話は進められた。

「入院期間は一週間です」

「寝間着や持っていく物は?」

「それならこのリストに書いてあります」

「ふむ、では早速準備に取りかかるとしよう」

「勝手に進めんじゃねぇよ」

先程の威勢は失せ、疲れた表情で一つ大きな溜め息を吐いた。
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