捧げ物

□メルヘン妄想者
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ある夏の日。
私は一つの目的のため、この異様なまで光輝いている部屋にいた。
目の前の男と一緒に。

「仲達殿はお茶が良いですか?」

こやつの名は張儁乂。
私の同級生で、クラスメートだ。
そして、恋人、でもある。

「あぁ、茶でいい」

私が応えると、ルンルンっと鼻歌を歌いながら、茶をいれる。
その間、私は暇なので、雑誌かなにかあるかと、こやつの部屋に置いてある本棚の中を見ていた。
無い。
あるのは全て乙女チックな物ばかりだ。
そういえば、こやつの部屋に来ること自体、久しぶりなのを今思い出した。

「お茶入りましたよ。どうぞ」

テーブルに置かれた茶を手に取り啜る。

「さて、どうします?あの話」

儁乂がこちらに話を振ってきた。
私は眉間に皺を寄せ、考える。
だが、何も浮かばない。

チッ!
あの腐れ教師めが!!

浮かぶのは愚痴ばかりだった。





今から約二時間前。
三國学園、二年一組教室。
私と儁乂は担任教師の曹丕に呼び出された。

「お前逹二人に頼みたいことがある」

真剣な面持ちで私達の方に歩み寄ってくる。
何か重大な事なのかと私は身構えた。
しかし、次に出された言葉に、不本意ながら拍子抜けしてしまった。

「お前逹に学園祭の劇の台本を書いてきてもらいたい。話はそちらで決めろ」

私の眼が点になった。
教師であろうものが、たかが物語を書くのをめんどくさがり、生徒に押し付けてきたのだ。
もちろん、私はそのようなことは嫌だったので、断ろうと口を開いた。

「い……」

「分かりました!!」

「は?」

今、こやつ何をいった?

「そうか。それでは後は任すぞ。〆切は三日後だ」

そう言って曹丕は教室を後にした。
固まる私と、眼をキラキラと輝かせる儁乂を置き去りにして。





「お前が考えろ」

私は出来るだけ冷たく言い放つ。
だが、こやつは待ってましたと言わんばかりに満面の笑みを作った。
そして本棚から一冊の本を引っ張り出してきた。
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