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□想い人はだれ?
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ただ同じ年に国史を受けた腐れ縁。
共に若手随一の出世頭でそれはあいつが武官に転じてからも変わらなくて


何時からだろう──


出会った時から女の噂の絶えない奴だった

散々、怒鳴り散らしもしたがそれだけだったはずだ



それなのに何時からか


あいつの香りに別の香りが混じるのに
胸が締め付けられるようになった


あいつの触れる女に

嫉妬してるのだと気付いた


それでも

本気じゃないのを知っていたから

平気でいられた、

何食わぬ顔をして傍に居られた。



でも、

見てしまった

知ってしまった


あの日
迷いに迷った帰り道
月明かりが降り注ぐ回廊に一人天を仰ぐ楸瑛を見つけた
一枚の絵画のように美しいその光景に引き込まれた──


ただ静かに
月を見上げた楸瑛の横顔に


浮かんだ感情に

自分は気付いてしまったから知ってしまったから
狂おしいまでの想い



その憂い

誰かを求めて──

楸瑛にそんな顔をさせる
誰かの存在に気付いてしまったから



「愛おしい人」


と何度もからかいに口にされる言葉に
身を裂かれるような痛みが宿る。
それは誰に向けての言葉?


平気な訳がない

いつも

いっぱいいっぱいで


どうにかなりそうだった
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