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□貴方が好きなんです
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吏部侍朗 兼 王の側近
李 絳攸 は
偶然、(ほんと偶然・・・?)
府庫にいる主上を発見して一仕切り叱りとばすと主上を連行・・・
いや、連れ立って執務室へ向かっていた。
回廊には温かい光が溢れ青く抜けるような空が和やかな気分にさせる。
そんな穏やかな午後に
ふと、聞き覚えのある柔らかな声が聞こえてきた
劉輝と絳攸は声の主を探すために辺りを見回すと回廊の向こう側に女官であろう女人と楽しそうに笑う楸瑛の姿を見つけた。
怒るであろう絳攸を劉輝がそろりと伺うが絳攸の表情が変わることは無かった。
年若い男女が親しげに話すその光景は
自然な男女の姿でとても似合っている。
絳攸はそう思ってしまった。
楸瑛と絳攸は付き合っている。
それは誰にも言ったことがないし言えないこと──
男女のものではないこの関係は決して歓迎去れるものではなかったけど
絳攸は幸せだったし
楸瑛も愛してくれているのを知っている。
ただお互いの心だけを証に────
いつもなら気配で気付くこの距離にも庭の木々が溶かすのか
楸瑛達側からは死角になるこの場所の木々に遮られた絳攸達の気配には気付いていないのだろう
楸瑛がこちらを見ることはなかった。
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