「ん…」
日頃の規則正しい生活の賜物か、習慣か。
窓から差す光で目を覚ましたナルト。
しかしいつもと違う布団となぜか体に感じる重みに違和感を覚えて、ちょっと顔を動かして。
「〜〜っ!?」
視界に入ってきた銀色に、思わず噎(む)せた。
―ナルトの休日―
(えっ、ちょ…っなんでこんな事になってんだってばよ!)
夢の世界から一変、ものの一瞬で現実の世界に覚醒した頭を回転させて。
(…や。こんなときこそ、落ち着かねーとな)
ゆっくり目を閉じて身体中に酸素を行き渡らせて、おそるおそる瞼を押し開ければそこには――
「……」
やっぱり自分の元先生兼現上司―カカシがいた。
(でもなんかいつもと違う、ような…)
またしばらく思案して、その理由に辿り着く。
(…カカシ先生ってば、口布してねー…)
どんなに暑い時でも、例え温泉へ行ったとしても絶対外そうとしなかった"はたけカカシ七不思議"の一つにも数えられる口布(とその中身)。
それを何事もなく下ろし、その素顔を惜しみもなく晒している。
ナルトは静かに寝息を立てるカカシをじっ、と見ながら思った。
(…カカシ先生、綺麗だってばよ)
昔、サクラやいのはよくサスケを見て『顔立ちが整っている』と騒いでいた。
かなり悔しいのだが、それはなんとなく分かった。
けれど―…
(顔立ちが整ってるって、こういう事だってばよ。…多分)
里では他に見ない銀の髪。
それと同じ色をした長い睫毛だとか、自分とは全然違う、すっ…と綺麗に通った鼻筋だとか。
所々に残る古い傷跡でさえも、全部カカシを引き立たせるものなのだと思う。
(やっぱオレ、カカシ先生好きだなー)
きっと、多分、恋愛のそれとは違うかもしれないけれど。
ナルトにとってカカシが大事な場所にいるのに間違いはないのだ。
『カカシせんせー!約束通り起こしに来てやったってばよー……って。寝てんじゃんか!おいっ、カカシ先生ってば!』
『んー…もうちょっとだ…け…』
『喋りながらどさくさに紛れて布団に潜んな!』
『…うるさいよ、ナルト。近所迷惑、でしょうが…』
『誰のせいだってばよ、誰の!いい加減にしねーとオレふて寝するからな…ぶっ』
『…それでいいじゃない…一緒に寝れば万事解決、なんも問題なし』
『や、大有りだろ。つーかなんだってばよこの体制…』
(…あ…でもカカシ先生ってば、なんかいい臭いする…ちょっと寝やすい、かも…)
数時間前の出来事を少しずつ思い出してきたナルトは
「〜っなんで!?」
また軽いパニックに陥って。
(…どんな顔すればいいんだってばよ…)
頭に浮かべていただけのつもりの言葉が、いつの間にか(というか最初から)全部口に出ていた事に気付かないまま、
(…そろそろ起きてもいいかな…)
何故か耳を隠そうと奮闘しているカカシの様子にまた慌てるのは、もうしばらく先の事である。
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