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□幸せな錯覚
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バイトで疲れた体を引きずって帰る、いつもの帰り道。
漸く我が家が見えたと思ったら、カーテン越しに明かりが漏れてるのが見えた。
思わず、口元がニヤケる。と同時に慌てて手で隠す(不審者だと思われたくないから)。
「たーだーいまー」
「おかえりー」
「来てたんさね」
「うん。今日はバイト、早く終わったから」
「お疲れさん」
「ラビこそ。ご飯出来てるよ」
そう笑うと、オレに向かって手を伸ばしてきた。
「なに?」とその手にオレの手を重ねてみた。 すると彼女は目を丸くしたあと、吹き出した。
「…なに笑ってんさ」
「私は上着と鞄が欲しいんだけど」
「え゛、あ、サンキュ…」
「ラビってけっこう恥ずかしい人だね」
「うるせーよ!」
恥ずかしさを隠そうと顔を反らしたら、「ラビは素直じゃないなぁ」と笑いながら彼女は部屋の奥に行ってしまった。
後を追うように玄関から廊下に上がった。オレの好物の匂いがする。お腹が鳴りそうなのを抑えながら、室内に入った。そこで彼女はハンガーにオレの上着をかけながら鼻歌を歌っていた。
「お前ご機嫌じゃん。鼻歌なんか歌っちゃってさ」
「そー?」
ドアによしかかりながら声をかけると、これまた嬉しそうな声が返ってきた。
そんな嬉しそうにされると、こっちまで嬉しくなる。オレもつくづく、彼女に甘いと思う。
「ま、お前が嬉しいならそれでいいけど」
「うお」
「なにさ」
「…ラビって本当に恥ずかしい」
「待て待て」
人がせっかく良いことを言ってんのに、何でこんな風に言われるんだ。あぁ、オレの立場って…
「だって、」
「ん?」
「さっきラビが帰ってきてからのやり取りがね、」
「もうその話は…」
「新婚さんみたいじゃなかった?」
幸せな錯覚
(何でそんな可愛いこと言うんだよ!)
書くのが久しぶり過ぎるので、リハビリ文。
どこも新婚っぽくありませんが(ぇ)…大目に見てやって下さい!
2010.3.23 SAKURA