―天地を越えて― book
□標的2 対面
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「ふぁ〜…」
眠い…
昨日は彼女が現れた。おかげで気になって全然眠れなかったよ…
リボーンには叩かれて頭痛いし…
朝から良いことねーなー…
「ツナ、おはよ!」
「10代目、おはようございます!」
「あ…2人とも、おはよう…」
重い瞼を無理矢理上げて、2人に挨拶をする。2人とも元気でいいなぁ…
俺はとにかく眠くてしょうがないのに。
「あ、そうだ2人とも。昨日の女の人…覚えてる?」
「あ、覚えてるぜ?スッゲーキレーだったよなー…
昨日、親父に話したら、そんなにキレーな人もいるのかー…って納得してたぜ。」
「俺も覚えてます。あの女、いったい何をしたかったんでしょう…」
2人とも覚えてる。
やっぱり、あれは現実だったんだ…
本当に、現実味を帯びていなくて不安だな。夢のときみたいに、どことなく、儚かったけど…
学校に着いて、教室に入ると、俺は男子に捕まった。教室の外に出されると、クラスメイトじゃない男子もいた。
「おい、ツナ!!」
「え?」
俺は何が何だかわからない。
だって、いきなり捕まったんだよ!?俺はただ、普通に登校してきたのに…
今日の朝は、眠れなかったというおまけが付いてるけど。あー…授業中、寝てしまって先生に注意されないといいな…
と、とにかく、男子に捕まったってことだ、今は。
「「「あの昨日校門とこにいた人とはどういう関係なんだよ!!」」」
「えーーーー!!!?」
そこですか!!
確かに、彼女はとても綺麗で、100人中100人振り返ってもおかしくないくらい美しい人だけどさ。
それに、声をかけたのは俺だけだよ。だからって、俺に繋げるの!?…おかしくないけど。知ってるし。
「ん〜…知り合い?」
「何で疑問系なんだよ。紹介してくれよ〜!」
「え…」
………。そう言われても困るよ。
本当に、知り合いって言えるか曖昧なんだからさ。
ちょうど、そこでチャイムが鳴り、俺はどうにか解放された。
俺は全然彼女のこと、知らないことを改めて知った。
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放課後になる。
休み時間の度に男子が集まってきて、大変だったな。まぁ、獄寺君が追い払ってくれたことが今日は嬉しい。
獄寺君と山本が、帰ろう、と誘いに来る。俺はそれに頷き、鞄に荷物を詰め、持ち上げた。
今日も教室が騒がしいな。
生徒玄関には、雨でもないのに人が溜まってる。
不思議に思い、首を傾げながら、外へと出た。山本が校門の方を指差す。
「ツナ、あれ!」
俺は目を見開く。また、彼女はいた。
夏らしい、涼しげなワンピース。色は白で、彼女の白い肌に馴染んでいる。
あの姿、見てる、いつも。
絶対に、彼女だ。絶対、彼女だ。
俺が夢で見る、いつもの姿。あんなに沢山見てるんだ。見間違えるはずない。
金色の髪が、風に靡き、綺麗に輝く。
彼女は一歩、一歩とこちらへと近づいてくる。
俺と彼女との距離が最初の半分になる頃、彼女の瞳の色が見えた。緑の、憂いを帯びた瞳。俺の足も自然と前へと進んでいた。
徐々に縮んでいく距離。誰もいない、俺と彼女だけの、夢の中の空間のようだ。
対峙する距離になると、俺も彼女も自然と足を止めた。俺は、彼女の名前を口にした。
「雪音………」
彼女は微笑んだ。