―天地を越えて― book

□標的4 雲雀恭弥
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『………ん〜……』



閉じていた目を開ける。
温かい日差しが注ぐ和風の一室。襖の隙間から零れたそれが、細く、部屋を分かつ。
布団から起きあがり、軽く体をほぐす。視線を時計の方へと促す。




だが、その時計の時間が問題だった。





『……………遅刻……』





ボソリ、と小さく呟いた。そして、勢いよく立ち上がり、寝間着を脱ぎ捨てる。
急いで胸にサラシを巻き、Tシャツを着る。イヤリングを紐に通して首に掛ける。
壁に掛けてある制服一式に手を掛ける。ズボンを履き、ベルトを通す。ベルトを通すのが、こんなに面倒だなんて考えたこと無かった。
ワイシャツを着る。こちらのボタンも面倒だ。鞄の中身を確認して、肩に掛ける。
襖が勢いよく開かれるのと同時に俺は部屋を飛び出す。


現在の時刻、8時57分。





「あ、あつし様…朝食です。」



『サンキュ!!』



白虎が差し出した皿の上に乗っているトーストを通り過ぎるときに持っていく。それを口に加えたまま靴を履いて屋敷を飛び出した。
まさか、こんな、漫画とかでよくありそうなことをするなんてな…
つーか、雪斗達、俺を置いて行きやがったし!今度仕返しでもしてやる…
しかし、今日のトーストはマーマレードか。砂糖は全然入ってないや。旨い。



俺は学校までまっすぐ走っていた。
走ってもせいぜい、10分から15分はかかる。歩いて25分はかかるんだ。
近道のために屋根の上を走ってるから、不審だよな。…まぁ、近道したら5分で着くはず。俺はトーストを食べきる。

学校の手前で、地面に着地する。




『やっべ…完璧遅刻じゃん……』



生徒玄関へと、まっすぐ足を進める。だが、それを誰かに遮られた。

俺の目の前に突き出されたトンファー
その持ち主は、黒髪で、学ランを羽織った男子生徒だった。学ランの左腕に、【風紀】と刺繍された腕章が付いている。

俺は後ろに飛び退いた。



「…君、遅刻だよ。」


『そんなの、わかってますよ。』



遅刻者を、取り締まってるってわけか。



「君……咬み殺す。」



彼はトンファーをその手に構え、俺へと振り回した。素早いその動きを避け、更に後ろへと下がる。
俺も、肩に掛けていた鞄を地面に置き、構える。




「ワオ。僕とやるってのかい?」



『ええ…咬み殺されるのはゴメンですから……』



俺達は同時に地面を蹴った。
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