―天地を越えて― book
□標的5 棒倒し(前編)
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学校には体育祭と呼ばれる運動能力を争うお祭りがあるらしい。それは、団体で行われるらしく、俺も群れて戦うしかないようだ。
並中では縦割りでA・B・C組で組対抗でやるらしい。んで、俺は1−Aだから、A組だ。
暑苦しくなるようなので、俺は絶賛お断りしたいが、佐雪に連れられて今、講義室に来ている。
『あ、ツナ。それに獄寺と山本。』
「あつし、やっと来たんだ。」
講義室のある席に、3人仲良く並んでいた。手前からツナ、獄寺、山本、と並んでいた。俺達はツナの隣に座る。
ツナがもう1人に気付く。
「ねぇ、後ろの人は誰?」
「あたし?あたしは2年の雷淀佐雪。よろしくね。」
「あ、はい!宜しくお願いします…えっと……」
「佐雪って呼んで。」
そう、佐雪は笑った。相変わらずの笑みだ。
しばらく雑談していると、リーダーが来たようなので全体が静まりかえる。
「極限必勝!!!」
大音量のその声が響いた。佐雪に誰だ、と訊いたら、「笹川了平」って返ってきた。…笹川?
京子と同じ苗字だな。
熱く語るその笹川了平という男子生徒は暑苦しいくらいに燃えている。
こっちにとってはそれは迷惑だ。
「うぜーっスよね、あのボクシング野郎。」
「んなっ!!」
「フツーに喋れっての。」
「まーまー」
獄寺も若干お怒りのようだ。俺もそれは一緒で、今、眉間に皺が寄っているだろう。
「今年も組の勝敗をにぎるのは、やはり棒倒しだ。」
笹川了平は静かにそう言う。…ボータオシ?何だ、それ。獄寺も同じ疑問を持っていた。
「ボータオシ?」
『ツナ、ボータオシって何だ?』
「あたしにも教えて。」
佐雪も知らないようなので、3人でツナに訊ねる。
「どーせ1年は腕力のある2・3年の引き立て役だよ。」
ツナはそう答えた。他にも、男子がやる競技だってことも。男子か…
ということは、俺もやるのか。めんどくせ。
ま、引き立て役ってことは目立たなくていいってことか。抜けてても目立たないよな。
あ、そろそろ風紀の仕事の方に行かないとな…
言ってなかったけど俺、風紀委員に入りました。
さて、どうやってこっそり抜け出しましょうか…
「1のA、沢田ツナと黒金アッツーだ!!」
「へ?」
『ん?』
「「「「「な!?」」」」」
いきなり名前を呼ばれた。…けどさ、俺のフルネームは黒金あつしなんだけど。アッツーは一応、あだ名なんだけど。ってか。
俺は佐雪を睨んだ。そしたら、「あはは〜♪」なんて暢気に笑った。こいつが教えたのね…
「おおおっ!」
「10代目の凄さをわかってんじゃねーかボクシング野郎!」
「は?えっ、なんで!」
「アッツー凄いねー」
『いや、凄いねーじゃねーだろ。お前。…ってか、何の話?』
俺さ、一切話聞いてなかったんだけど。
佐雪は総大将だと説明してくれた。棒倒しの頂上に座るらしい。
『俺、パスしまーす。代わりにツナを推薦しまーす。』
「あつしまで!!」
ツナを横目で見たら泣きそうだった。
「ムッ、なぜだ!雲雀とやり合っていたほどではないか!雲雀は俺も実力を認めるほどの男だ。互角に張り合っていただろう!」
『俺、目立つの嫌いなんです。だから、お断り、ってわけですよ。』
恭弥と戦った時は目立ったみたいだけど。遅刻を避けてるのも、目立ちたくないからなんだけどね。
俺は立ち上がって、ツナに「頑張れ」の一言を言うと、風紀の仕事をやるために応接室へと向かった。
だってさ、恭弥、遅れると五月蠅いんだよ、めっちゃ。