―天地を越えて― book

□標的14 あけまして、おめでとう。
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『え〜!?嘘…』



《ホント、悪いな。仕事が大量なんだ…
だから、2、3週間は帰れない。》



『………わかった。仕事、頑張って。』




ガチャン、と置かれた受話器。深く1つ、溜め息を吐く。


年越しが近づいている今、各家庭では大掃除が行われている。
私は、ちゃちゃっとやっちゃってもう大掃除は終わっている。
けれど夜紀は、神社の方もやらないといけないので当分いない。向こうに泊まっている。
狐とかは、京都の実家に帰っている。そっちで掃除中だろう、今頃。


特にやることもないから座布団に座る。


年越し、1人か…。
クリスマスは、みんないたのになぁ…。1人寂しく……


そう思うと、悲しくなってきた。
それと同時に、出掛けたくなってきたので外に出ることにした。



――――――――
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にぎやかな商店街。沢山の人でにぎわっている。



「あら、雪音ちゃん?」



私は振り向いた。そこには、奈々さんがいた。
前、綱吉が入院した時に会ったのだ。



『こんにちは、奈々さん。お買い物…ですか?』



「ええ!今日の夕飯を買いに…雪音ちゃんは?」



『私ですか?私は…1人、ぶらぶらと…
兄姉が、正月は帰ってこれないと、さっき電話があって…それで、1人で正月を迎えることに………』



って、私、何奈々さんに言ってるんだろう。彼女には全く関係ないのに。

奈々さんは、「あら、」と声を零し、私の手を握る。彼女がなぜ、私の手を握ったかわからず、彼女と自分の手を交互に見比べた。




「じゃあ雪音ちゃん。家にいらっしゃいよ。」



『え……え?』




笑顔でそう言う奈々さんに驚き、私は変な声を出してしまった。




「だって…1人、なんでしょ?」



『は、はい……』



「なら、家にいらっしゃい。雪音ちゃんが来たら、ツッ君だって喜ぶわ。」





綱吉が……

その名前を聞いた途端、何だか「会いたい」って思い、私は承諾した。
今日も、1人だと話せば「泊まっていきなさい」と、優しく奈々さんは言ってくれたので、私はその言葉に甘え、泊まることにした。


荷物を用意する必要があるので、私は一旦、屋敷へと帰ることにした。
若干、浮かれ気味で。
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