―天地を越えて― book
□標的17 バレンタインデー
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場所は、学校へと移り変わる。
『………………………………………………………………………。』
「…おーい、あつしー…」
ツナは、自らに抱きついている人間の頭をつつく。その者からは何の反応もない。
再度、呼びかけるも何も応えない。
「あつし、離r『ヤダ。』…何でだよ……」
ツナに抱きつき、彼のお腹の辺りに顔を埋めていた俺は彼の言葉を遮り、言う。
ツナは、その返答に不満げに理由を訊ねた。
『だって…匂い………が…』
「………?匂い?何の。」
『……甘ったるい、匂い。』
………甘ったるい匂い?何だろう、とツナは考える。
今日は、バレンタインデー……だよね。それで、獄寺君とか山本とかに、女の子達がチョコを受け取って貰おうと追いかけられ………あ。
俺が、嫌がる理由を察し、ポンポン、と頭を撫でてくれるツナに甘え、俺はツナにすり寄る。
「…大きな猫みたい。」
『…何とでも言えー……
ツナ、いい匂い……』
ツナが、溜め息を吐いて、また、俺の頭を撫でた。
何かに、怯えながら。
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安全だと思っていた応接室にもチョコの匂いがあったし、屋上は寒いし…
今日は、ツナに迷惑かけたなぁ…
授業中は、どうにかツナから離れたけど…死ぬかと思ったな。休み時間に入った途端に、の繰り返し。
どうにか、全ての授業が終わり、やっと、帰宅できる。
『今日は、悪かったな、ツナ。』
「ううん。大丈夫だよ。」
『ツナは本当に優しいな。』
ほほえみかければ、相手も同じように返してくれる。
すっごい…幸せ感じるなぁ……
…あ、そうだ。
『山本ー』
「ん?あつし、ちょっと元気出たか?」
『うん、どうにか。夜紀から、貰った?』
「??いんや。」
『そっかー……』
あいつ、まだ渡してなかったのか…
山本に礼を言って、俺は教室を出ていく。
途端、隣をツナが凄い勢いで走っていった。…例の、パンツ姿……で。
京子の名前を呼んでいたのが、ちょっと、悔しかった。夢の中では、あんなに優しく、自分を呼んでくれるのに…
今日、夢で会えるといいな。
そう、思いながら廊下のタイルを見つめ、歩いていた。