―天地を越えて― book
□夜紀のバレンタイン。
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俺は今、雪音と台所に立っている。
普段、滅多に料理なんてしない俺が台所に立っているなんて、特別な理由がない限りありえないだろう。
そんな、特別な理由は。今日の日付を言えば誰だって気付くだろう。
今日は、2月13日。
『まずね、チョコレートを細かくきざむの。』
「…こうか?」
『ちょ……それじゃあ大きすぎっ!もっと細かくっ!!!』
「何だよテメーッ!!」
こいつ、結構ムカつく!!
でも、口にしたら酷い仕打ちが後に来ると思うから…止めておく。
チョコレートを更に細かくきざむ。…こんなに小さくしたらすぐ溶けるなぁ………
『それでOK。次は湯煎。このボウルに入れて。それでね…』
彼女の指示どおり全てを進めていく。
ふ〜ん…1回溶かすのか…。初めて知った。 (←お菓子作りの知識皆無。
俺……食べる専門だしな……。溶かしたチョコレートを型に流し込む。
それにトッピングをして、冷蔵庫の中に入れる。
『あとは冷やして固めれば完成よ。』
「おう。溶かして固めるだけなんだな……こういうの。」
『でも、トッピングもしなきゃ。』
そう言って頬を膨らませる彼女は、子どもみたいだ。
まあ、実際意外と精神年齢が低い面があったりする。高かったり、年相応であったり……
とにかく。こいつの精神年齢が不明、ということだ。…今、関係ねぇな、これ。
「ふんふふ〜ん♪」と楽しげに鼻歌を歌いながら冷ましていたスポンジケーキに先程のクリームを塗っている。
…でも、今、こいつが作ってるの1個だけなんだよな。どこを、どうしたらあんな量になるんだ?
俺はふと、疑問に思うのだった。
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さて、今日は当日です。
俺らしくはないが、可愛らしくラッピングをする。
…学校での振る舞いなら…怪しくないか。
ラッピングしたチョコを鞄の中に入れ、肩にかける。
『……どうでした?夜紀さん。チョコの完成度は。型から出しといたんだぜ?』
「…それは、ありがとさん。」
……あつしの時のこいつって……
嫌味。
。