イナズマイレブン

□イナズマイレブン 春奈は弟
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それを見た瞬間春奈の中で何本かある線のうち一つが切れた。
急いで身長が同じくらいの半田を捕まえ、着ている男物の衣装をふんだくる。そして、それに着替えたら、急いで舞台へと飛び出す。

「はるか北の国の王子よ、気安く我が姫に触れないでいただきましょう。」

男らしさ全開の春奈。
歩き方もセリフもきまっている。
春奈のいきなりの登場に佐久間は、一瞬驚くが、春奈は機転を利かすのが得意だし、きっと、何とかしてくれる気がした。今、佐久間の中で春奈が救いの神に見える。

「我が姫?このうるわしの姫はまだ、誰のものではないはずですが?」

「そう思っているのか?言っておくがシンデレラは私の妃となる運命だ。」

ちょっと待て、ますます話がややこしくなっただけなのか?
真剣に佐久間は思ったが、とりあえず見守る。
で、そんな折、メガネが機転を利かせたナレーションを入れる。

「その昔、シンデレラの母は遠く西の国の女王と親友でした。しかし、二人は別々の遠くへと嫁ぐことになり、一つの約束を交わしました。互いの子を結婚させるという約束です。」

とっさに作るストーリー。
でもってさすがはメガネ。メルヘン系なのや王道恋愛のストーリーをすらすらと作ってしまった。

「そう、この青の王子はシンデレラの母と親友だった女王の息子。つまり、シンデレラの許嫁だったのです!」

青の王子か。せめてもう少しまともな肩書きをつけて欲しかったが、このアドリブで乗り切らなければならない場面では仕方がない。
しかも、春奈のイメージカラーは青だし仕方がない。

「シンデレラ、突然で信じられないでしょうが、私の母とあなたの母は親友でした。そして、二人は私達を許嫁としたのです。」

メガネのストーリーに合わせる春奈。
流石です。
てか、この二人の連係プレーは素晴らしいな。鬼道と春奈の連係プレーもすさまじいが。

「どうか、私と共に来て下さい。必ず、あなたを幸せにすると誓います。」

佐久間の手を握りながら春奈は言った。
近い、近いよ。
でもって、物凄く小声で

「僕の事を振り払って舞台袖に一度引っ込むんだ。」

と、春奈は言った。

「私は、あなたと行けるような身分ではありません。どうか、私の事はお忘れください!」

春奈に言われたとおり、佐久間は一度舞台袖に逃げる。
ま、いきなり王子二人に言い寄られたら逃げたくもなるとか言った感じだのだろう。
そう言った展開を作るためのストーリーだったのかと感心する佐久間。
でもって、アフロディーと春奈は佐久間と同じ方向へと走って行く。

「とりあえず、鬼道さんの場面入れますよ。」

と、メガネ。
急いでどうするか考えなければならない。
もう、脳はフル回転を始めている。
で、一度鬼道の場面が入る。
ここは、本筋と同じだ。
でもって、次に魔法使いと春奈の場面を付け加えた。

「おばあさん、私は一体どうすればいいのでしょう?」

と、佐久間。
演技とかではなく、本気で言っている。
影野、アドリブでちゃんとセリフを言えるのか?そんな不安が充ち溢れているメガネとか、佐久間。

「あなたは、どうしたいのかしら?」

と、影野。

「私は・・・・・・。」

「ねぇシンデレラ、私に出来るのはあなたが幸せをつかむために少し手を貸すだけよ。」

影野なかなかの演技です。
てか、結構役者なんだな。

「一度、自分の気持ちと向き合いなさい。そして、答えが出たら私は手を貸してあげましょう。」

と、言って舞台袖に引っ込む影野。
ここで一度舞台は暗転する。

で、本筋同様にガラスの靴の持ち主を探しシーンに入る。
ここはメガネの指示だ。なんでも、3人の王子を衝突させるつもりらしい。

「ようやく会えました。」

ガラスの靴が佐久間にぴったり合ったシーン。
今のは鬼道のセリフ。

「このような姿でも、お分かりですか?」

「もちろんです。たとえどのような姿でも、あなたは気高く美しい。」

この後一体どうする気だと思いつつ鬼道は劇を続ける。
正直、この後何が起こるか聞かされていない。てか、何が起こるのか知っているのはメガネと指示を受けたというか、シナリオを何とかしようとしている春奈ぐらいだろう。

「どうか、私の妃となってください。きっと、あなたを守り、幸せにして見せます。」

一瞬、セリフが飛びそうになった佐久間。
もうちょっとで、なりますと即答するところだった。

「ダメです。シンデレラは渡せません。」

と、やって来たのは春奈。
どうやらシナリオが確定したようだ。
にしても、声が本気だった気がした佐久間と鬼道。いや、もしかしたら本気なのかもしれない。

「シンデレラは私の許嫁。あなたには渡せません。」

「そう言って、現れたのは青の王子。」

と、メガネがナレーションてか、解説を入れる。この二人はあの短い時間でどれだけの打ち合わせをしたのだろうか?やけに息がぴったりだ。

「たとえ許嫁だとしても、シンデレラは私の妃となる運命。」

「さらに、金色の王子が赤の王子の前へと現れた。」

いつの間にか参戦してきたアフロディーに関する解説を入れるメガネ。
てか、金色の王子。いや、アフロディーのイメージカラーは金色だ。でもって、赤の王子こと鬼道もイメージカラーとぴったりだ。

「お前は、舞踏会の日にシンデレラにふられていた王子。まだ、諦めていなかったのか。」

と、アドリブで冷たいコメントを喰らわす鬼道。恨みとか私情が全力で入っている。
でもって、春奈は心の中で鬼道に声援を送った。

「3人の王子に求婚されるシンデレラ。果たして、彼女の運命やいかに!」

やけに熱のこもった声で、メガネのナレーションが入る。
ここからしばらく3人がアドリブで嫌味の応酬を続ける。いや、アドリブというか、本気で言い争っている。
佐久間は、春奈や鬼道が放送禁止用語を使ったりしないか心配だ。アフロディーを罵り始めると、かなりの高確率で放送禁止用語が飛ぶ。

「いい加減にお止めなさい。シンデレラが困っていますよ。」

と、言ったのは影野。
影野が目立っている。凄いぜ。

「ここは、男らしく決闘で決着をつけなさい。」

これは、メガネの入れ知恵。
ま、昔話にはよくあるパターンだ。でも、決闘って何をさせる気なのだろうか?
下手な事をさせれば、春奈がアフロディーと鬼道を重傷にさせかねない。

「決闘の種目は?」

「剣!男なら剣で戦い、勝つのです!」

こいつ、本当に影野か?
そんな疑問を抱く佐久間と春奈。
でもって、剣で勝負となると断然春奈が有利だろう。
雷門最強の強さを誇っているわけだし。

「いいだろう。その勝負受けた。」

と、鬼道。
やけに自信満々だ。
まあ、帝王学の一つとして習わされたから、剣も結構得意だったりする。
こうして、仁義なき決闘が始まる事になってしまった。
果たして、佐久間は誰の手に渡ってしまうのか?
佐久間的には鬼道さんをひたすら応援。1000歩譲って春奈ぐらいに勝って欲しい。アフロディーは論外中の論外だ。

もはや、シンデレラじゃないこの演劇。無事に終わるのか?
そんな不安を胸に、戦いが始まってしまう。

一度舞台は暗転し、いつの間にかこしらえた闘技場ぽっい舞台になる。
他の劇の場面のを無理やりメガネが用意させたみたいだ。

とりあえず、鬼道以外はマントを外し動きやすくする。この、やけに重要な場面であろうとマントを外さないポリシーはどうなんだ?
でもって、戦いが始まる前に春奈が鬼道に耳打ちする。

「始めにアフロディーを倒すから、その後、邪魔者抜きで戦おう。」

最初のうちに最も邪魔なアフロディーは潰して置くから、くれぐれも手を出すなとの事だ。
これ、ある意味で究極の兄弟決戦になりそうな気配がする。

「ルールは簡単。3人で戦い、最後に生き残った者がシンデレラと結婚する!男の仁義なきバトルだ!」

と、言ったのは角馬。いつの間にか実況を入れる気満々で舞台に上がっている。
大丈夫かこのまま進めても。
カメラを回し、シャッターを切りながら土門は思った。
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