イナズマイレブン

□小さな恋人
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友達、親友だって思っていた相手に対して抱いて気持ちが、本当は恋だって知ったのは何時だったんだろう?
それさえも忘れてしまうほど長い間、ずっと、思い続けていたと思う。
でも、好きだっていう言葉を言った事がない。失ってしまうのが怖かったから。
この恋は間違っているのかな?それもよく分からないけど、失ってしまうぐらいなら、言わない方がいい。ずっと、そう思っていた。
それなのに、

「五郎君。あのね、僕、五郎君に恋しちゃった。」

と、ずっと、思っていた相手に言われれば、

「嬉しいな。ぼくも、本当は秀一郎君に恋してたよ。」

と、笑顔で答えるしかない。
たとえ、洞面がしている恋と自分がしている恋がある種では全然違うものだとしても。
でも、多摩野は知った。洞面の恋も自分の恋も本当は同じものだったんだと。
心の中にある思いが爆発して、洞面を押し倒した際に。





多摩野は雷門のマスコットキャラだ。
可愛らしくて、大人の女性とかには可愛がられるタイプ。
無論、同級生からの受けもいい。
でも、多摩野が抱きつきたいのは、いつもべったりしていたいのは、違う学校のサッカー部の男の子。
元気で、マイペース。たまに馬鹿な事をやらかすがそこが、多摩野的にはとても可愛らしと思うのだ。
そんな風に多摩野が溺愛している男の子の名前は洞面 秀一郎。
あの有名な帝国学園のMFだ。
たぶん、というか、間違いなく身分違いの恋だと思っている。
なにせ、帝国といえば超が付く金持ち学校で、金銭感覚は庶民である多摩野とはかけ離れている。
そして、サッカーの才能もかけ離れていると多摩野は思っている。
それでも、好きだから時間が許す限りは一緒に居るし、時折、二人でサッカーの練習をすることだってある。まあ、多摩野の練習に洞面が付き合ってくれている形でしかないが。
とにかく、洞面が大好きな多摩野は

『は〜。次会えるまで、3日も待たないといけないんだよな〜。』

と、うんざりしながら、心の中で呟いた。
でも、仕方がないのだ。
帝国のサッカー部といえば、名門中の名門。すこぶる練習が忙しいだろうから。
でも、実際はそんなに忙しくない。というか、気が付いたら、割とだらけている。
原因はキャプテンの鬼道に恋人が出来たのと、帝国一の問題児(成神)に恋人が出来てますます調子に乗り出したのと、総帥がストレスで倒れる事が多くなった(ペンギンが原因)なのとで、ごたごたしているせいだ。
だから、その日、多摩野が会えないよなとため息をつきながら、帰ろうとしていると

「五郎君!!会いたかったよーーーー!」

と、門の外で待っていた洞面が、急に飛びついて来た。
多摩野は洞面にいきなり飛び疲れて、尻もちをついてしまうが、会いたかった洞面に会えたので、嬉しそうに洞面をギューっと、抱きしめた。
なんか、幸せだなーって、すごく思った。

「あのね、今日、成神君がね、寺門先輩に思いっきりペットボトルを直撃させて、騒ぎになって部活がお休みなの。だから、デートしよ。」

と、洞面。
それを聞いた多摩野は心の中で、部活を休みにした成神えらい。そう思いながら

「いいよ。どこか行きたいところある?」

と、笑顔で聞いたのだった。
すると、洞面は

「じゃあ、五郎君のお家に遊びに行きたいな。」

と、言った。
多摩野は、何処か無邪気な洞面が可愛いなと思いながら

「いいよ。お兄ちゃん達、今日は遅いってボヤいてたしね。」

と、言ったのだった。
すると、洞面はちょっと照れながら

「じゃあ、今日は二人っきりだね。嬉しいな。この前、せっかく二人でゲームしてたのに邪魔されたから、今日は邪魔されないね。」

と、言ったのだった。
多摩野は、ああ、抱きたいって、遠まわしに意思表示してるのに気付いてないんだなーっとしみじみと思うのだった。
まあ、洞面が妙に鈍感なのはいつもの事なので、多摩野は仕方ないなーっと諦める。





自宅に洞面を連れて戻った多摩野は、冷蔵庫からジュースを出して、適当なお菓子を持って部屋に戻った。
部屋にはゲームをしたくて仕方なさそうにしている洞面が待っていた。
多摩野は、本当に見た目と同じで精神年齢も低めで可愛いなと、微笑ましく思った。
それでも、やっぱり、ちょっと大人がするような事もしたいとは思う。たとえ、洞面の精神年齢が低くて鈍くても。

「今日こそ、僕が勝つからね。」

と、言いながらコントローラーを握る洞面。
多摩野は純粋な子供らしい洞面を見て、邪念を無理やり追いやってから自分もコントローラーを手にした。
そして、ゲームが始まった。
 

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