その他の物語

□ハッピーバースデー
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4月11日。
黒城はその日なぜか勝舞と一緒に公園にいた。
勝舞と常にセットなれく太もいる。
和やかな雰囲気とはいい難いが、それでも、そこまでぎすぎすとはしていない。

「よっしゃあ!黒城、デュエルしようぜ!」

と、相も変わらず元気いっぱいな声で勝舞は言った。
何故こいつは、毎日元気すぎるのだろうか?黒城には理解できないというか、理解して馬鹿がうつったら嫌だった。
でも、死ぬほど嫌いではない。でなければ、わざわざデュエルしようと誘われても断った。
それに、雑魚ではなく、かなり良く渡り合えるライバルだ。もっとも、今は自分の方が勝った回数は多い。

「勝ちゃん、頑張ってくださいね。」

と、れく太。
れく太もデュエリストだが、死ぬほど弱い。
雑魚デュエリストは好きではない黒城だが、れく太は何となく好きだ。あの、ギャグ的な吹っ飛び具合はなかなか笑える。
まあ、人前で普通の笑いなんぞする気はないから、完全無視を装っているが。

「ん?やべぇ。切札、悪いが今日は無理だ。」

と、時計を見て黒城は言った。
何事だろうかと勝舞は黒城を見る。

「何でだよ。せっかくデッキの改造も終わったのに。」

と、不満そうな声と顔で言った。
黒城は心の中で、お前が誘っておきながらデッキ改造を始めたせいで時間がなくなったんだぞ、そう言いたかったが、言ってもどうせ反省しない。
なら、もう何も言わない。言うだけ時間と労力の無駄だ。

「バイトがあるんだよ。お前と違って俺様は、忙しいんだ。」

「俺が暇人みたいな言い方だな。」

と、勝舞が不満そうな声で言った。
親のいない黒城はバイトをしながら生活している。
もっとも、住み込みの喫茶店のバイトだ。
そして、勝舞とその仲間たちにだけはその姿を見られたくなかった。

「暇人だろうが。とにかく、俺はこれからバイトがあるから帰る。」

「っちぇ。なら、明日こそデュエルやろうぜ。」

と、早くも立ち直った勝舞は言った。
そこまでして、新デッキで黒城に勝ちたいのかと聞かれれば、間違いなく勝ちたいと答えるだろう。

「分かった。明日もこの場所に来る。そん時は、お前を地獄に落とす。」

「ははは、やれるもんならやってみろ。今度こそ俺が勝つ。」

と、自信たっぷりに勝舞は言った。
二人とも物凄い自信にあふれているなと、様子を見ていたれく太は思った。
そして、ふと、気になった。

「ところで、バイトって何しているんですか?」

と、れく太は聞いた。
すると、一瞬黒城が石化した。しかし、すぐに立ち直り、

「お前らには関係ないだろ。」

と、冷たい口調で言った。
今日は、れく太とかの尾行に気を付けてバイト先に行こうと思った。
出来れば、と言うか、何が何でも知られたくない。
あの、喫茶店でのバイト姿だけはばれたら困る。

「まさか、いかがわしいバイトでもしてるんじゃ・・・・・・。」

と、ボケた事をぬかしたのは勝舞だ。
蹴り飛ばしてやろうかと一瞬思ったが、大人げないので止めた。
でも、やはり腹は立つ。

「するか!てか、一体何を想像した!」

と、つい、怒鳴ってしまった。
すると、勝舞はきっぱりと

「女装して、おかまバーでバイトしている姿!」

と、言った。
さすがに、腹立つを通り越して殺意が沸いた。
とりあえず、一発蹴り飛ばして置く。
にしても、なんでおかまバーでバイトなんだ。そして、どういう妄想をしたら俺が女装しないといけなくなるんだ、と黒城は真剣に思った。

「勝ちゃん、それはいくらなんでもそれはちょっと、怒られますよ。」

と、れく太。
まったくだ、と黒城も思った。
そう言えば、れく太は何を想像したのだろうか?まあ、きっと、勝舞とは違って、まともだとは思うが。

「なら、れく太は何を想像したんだよ。」

と、不満そうな顔で勝舞は言った。
するとれく太は

「僕ですか?僕はてっきり工事現場で働いていると思ってました。」

と、言った。
何故工事現場でバイト?いや、おかまバーより断然マシか。
それに、喫茶店のバイトよりかは想像がつくだろう。
でも、どうやったら工事現場なんだ?
そんな事を思う黒城。

「工事現場?なんで工事現場なんだよ。」

と、勝舞。
そこまで俺をおかまバーでバイトしている事にしたいのかと黒城は思った。
でもって、勝舞の質問にれく太は

「だって、勝ちゃんより、よっぽど筋肉があって体を鍛えているじゃないですか。」

と、言った。
まあ、勝舞と比べれば、段違いに筋肉ついているし、鍛えているように見えるだろう。
それに、ある意味では鍛えている。
喫茶店のバイトが終わった後、喫茶店のマスターこと源三郎に鬼のように運動させられている。
しかも、デュエルしながらだ。
あれは、かなり堪える。いや、心がたまに折れるかと思うぐらい辛い。
まさに、悪夢のような状態だ。

「って、いつの間にか黒城の奴いないし。」

と、勝舞。
地味にバイトの時間が迫っているのでさっさと帰ってしまった。
取り残された二人。
仕方ないので勝舞はれく太で新デッキを試したが、やはりれく太では話にならないのであった。
とりあえず、明日こそ黒城とデュエルして、デッキの性能を試そうと思った。
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