捧げ物

□猫のような恋人
1ページ/3ページ

帝国学園サッカー部の練習場では今日もきつい練習が行われていた。しかも、サボらないように寺門が厳しくチェックを入れている。
そんな中、辺見は落ち着きがなく、練習中に失態ばかりを繰り返していた。
いつもの辺見らしからぬ姿に驚いた何人かがミスをして、寺門の叱責を受ける。
そんな悪循環を見て鬼道はため息をつき、寺門を説き伏せ、土曜日の練習を中止させた。
そして、鬼道は辺見に

「練習に私情を余り持つ込むな。寺門の声がうるさくて頭が痛い。さっさと、何とかして来い。」

と、きつく言いつけたのであった。
辺見は、お前だって私情を持ちこんでいるだろうがと言いたかったが、鬼道に反論する気にはなれず、大人しく頷くしかなかった。

そんな訳で辺見は、自分が持ち込んでしまった私情を片付けるべく、恋人の家を訪ねていた。
辺見が落ち着きを失くした理由。それは、恋人である成神が4日近く登校拒否を起こしている事であった。


自由気ままな行動パターン。やたらと俊敏な動き。きまぐれに甘えて来る自己中心的行動。
それが、辺見が持つ成神に対するイメージであり、惚れた理由だ。
あの、猫のような性格や仕草がたまらなく好きで、気がついたら本気で好きになっていた。
おかげで、成神が休んでいる事が気になってしまい、練習どころではなくなっていた。
情けない話の様な気はするが、どうしようもない。
さっさと復帰してもらわないと練習になりそうもないし、なぜ登校拒否を起こしたか気にはなっていた辺見は、辺見の家に行ったのであった。

「で、あの馬鹿は部屋に閉じこもったきり、ずっと出てこないと?」

不機嫌な表情で辺見は成神の部屋まで案内してくれた執事に言った。
すると執事は困り切った表情で

「はい。4日前の朝からずっと、出てこなくなりました。」

と、言った。
取り合えず辺見は

「成神!さっさと出てこい!!」

と、怒鳴りつける。

「嫌だ!!絶対に出ない!!」

と、元気そうな声が聞こえて来た。
衰弱したり、落ち込んでいる様子は一切ない。これは、きっとくだらない理由で引きこもっているなと辺見は思った。
まあ、成神がくだらない理由で面倒事を起こすのはある意味でいつもの事だ。

「ドア、蹴り壊していいか?」

と、執事に聞くと困った顔をされてしまう。

「せめて、窓ガラスを割って入るぐらいにして貰えませんか?」

と、これはこれで物騒な事を言う執事。
辺見はこれと言ってツッコミを入れる事なく

「なら、そうさせて貰う。」

と、何の迷いもなく言った。
すると、中からやりとりを聞いていた成神が慌てた声で

「そ、それはダメ。」

と、言った。

「なら、開けろ。10秒以内に開けなかったら窓をたたき割ってでも中に入るからな。」

と、辺見は言った。
辺見なら本気でやるだろう。気が短いし、血の気が多いし、手っ取り早い方法を好む。
成神は、諦めるしかないと思い、

「分かった。先輩だけ、入って来ていいよ。入ったら、すぐに鍵閉めてよ。」

と、言って内側からかけていた鍵を開ける。
辺見は鍵が開くとドアを開けて中に入る。
一応、はいった後すぐにドアの鍵は閉めた。
部屋に入って、辺見は絶句してしまう。

「成神、お前・・・・・・。」

辺見は驚いた。
まさか、成神に猫耳と尻尾が生えているなんて、思っていなかった。

「じろじろ、見ないでよ!」

と、不機嫌そうな声で成神は言った。

「うう。こんな変な姿、見られたくなかったのに。」

と、布団をかぶりながら成神は言った。
辺見は、何故そんな姿になったのかが凄く聞きたくなった。
まさか、あまりにも猫っぽ過ぎて本当に猫になり始めたのか?そんな事を思っていると、五条印が入った瓶を見つける。
まさかと思い、瓶を見てみると説明書きが横に置いてあった。
それを読んでみて、納得がいった。

愛を深める薬

1 この薬は普通の薬とは違い、注意が必要です
2 飲む際には相手の事を鮮明に思い浮かべながら飲みましょう
3 効果を消すためには解毒剤を飲むか、飲む際に思い浮かべた相手とセックスをしましょう
4 自己責任で使いましょう

と、書かれた説明書。
どうやら成神はこれを飲んでしまったらしい。

「お前、何をやってるんだ?」

呆れきった表情で辺見は言った。
すると、

「いや、先輩との愛が深まるならと買ったんだけど、怪しいから先輩が飲む前に自分で試そうと思って。」

と、成神は言った。
一応、辺見の事を考えての行動だったらしいが、怪しげな薬を自分で試すのはどうなんだと、辺見は思った。

「で、飲んだら耳と尻尾が生えてきたわけか?」

「うん。こんな姿で出歩けないし、見られたくなかったし、仕方なく引きこもってた。」

それを聞いて辺見は大きなため息をつく。
説明書を見る限り、解毒剤がないと元に戻りそうにないのに、引きこもるなんて無意味だ。まさか、一生そのままと言う訳にもいかないだろうに。

「本当にお前はろくな事しないな。仕方ないから、何とかしてやるけど。」

「じゃ、じゃあ、五条から解毒剤貰ってきてくれるの!」

布団を跳ね除けて成神が言った。
尻尾がピンと立っているのを見ると、どうやら嬉しいみたいだ。
感情に合わせて尻尾が反応するようだ。本気で凄い薬だな。

「いや、解毒剤は貰ってきてやらない。こっちの方法で元に戻してやる。」

そう言って辺見は成神に口づける。
舌を入れられ、慌てて距離を取ろうとする成神を強く抱きしめて、放そうとしない。

「え、ええ!わざわざそっちの方法取るの!!」

と、成神が辺見を引きはがそうと頑張りながら言った。
一応恋人同士で付き合ってはいるが、抱かれるのは苦手だし、成神としては出来るだけ遠慮したかった。
ただ、拒否してもそれを辺見が受け入れた事は一切ない。何度強引に迫られ、辺見の言う事を聞いて来たか分からない。それでも、好きだから逃げるなんて選択肢が成神にはないのだ。

「当たり前だろ。どう考えたって、そのための薬だろうし。」

説明書き3の辺りを読む限りどう考えても、そう言う事をするための用途で作られていると辺見は思う。
耳と尻尾が何故生えてきたかは謎だが、元に戻す方法がセックスと書かれている時点で、気付くべきだ。

「いや、でも、解毒剤あるって、書いてるし、負担が大きい方を選ばなくてもいいんじゃないかなーっと。」

何とか辺見を思い止めようとする成神だが、辺見は一切耳を貸そうとしない。
しかも、戸惑っているうちに成神は、服を全部脱がされてしまう。

「お仕置きの意味も込めて、負担が大きい方を選ぶに決まっているだろ。お前は本当に俺をイライラさせるからな。」

4日も会えなくて、どれだけ寂しくて、心配したと思ってる?そんな素直な言葉が出てこない。

「お仕置き・・・・・・ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ。先輩のお仕置き痛いからヤダ。」

前に辺見にされた羞恥プレイと痛々しい行為を思い出し、成神は逃げ出そうとする。
しかし、辺見は成神の行動パターンを把握しているらしく、あっさりと捕獲してベッドの上に戻す。

「観念しろ。」

「ヤダ!痛いのはヤダ!」

駄々をこねるように、暴れながら成神は言った。
すると、辺見は小さくため息をつきながら

「なら、俺に奉仕したらお仕置きはしないで、抱いてやる。普通に抱かれるのは好きだろ?」

と、残念そうな口調で提案する。
それでも成神は逃げようともがく。
辺見の事は大好きだが、体を重ねるのは好きではない。だって、辺見に抱かれた後は体がだるくて、腰が痛いし、なにより、体の中に辺見の異物を押し込まれる時の感覚が苦手だ。
だから、お仕置きも普通に抱かれるのも嫌だ。

「っち。だったら2択だ。お仕置きされるのと、奉仕して普通に抱かれるのと好きな方を5秒以内に選べ。選ばなかったらお仕置きする。」

いつまでも大人しくならない成神に業を煮やした辺見は言った。
すると成神は暴れるのを止めて即座に

「奉仕すればいいんだな?やるよ!お仕置きされるよりマシだ!」

と、自棄になりながら言ったのであった。
お仕置きされるぐらいなら、普通に抱かれた方がましだと思ったのだ。

「分かればいい。さてと、何からさせるかな。」

この上なく楽しそうな表情で辺見は言った。
しばらく寂しくさせられた分、しっかりと返して貰おうと考えている。
何をさせられるか分からない成神は、辺見と違い、表情が暗い。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ