捧げ物

□夏だ!海だ!でも、いつもと変わらない!!
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夏休み。
雷門サッカー部は佐久間が所有する別荘に全員で遊びに来ていた。
もちろん佐久間が部活を堂々と休んで、鬼道と海で遊びたいが故に円堂に、風丸と水着でいちゃつきたくないか?と言って何とか説得したのだ。
そんな訳でサッカー部一同は佐久間の別荘にあるプライベートビーチで遊びまくっていた。
部活と勉強しかないんじゃないかと思われていたサッカー部としては嬉しい限りだが、恋人いない奴らは若干の虚しさを感じていた。
そんな中で

「風丸、何で水着に着替えないんだよ。」

と、幸せいっぱいのはずの円堂はふくれっ面をして、風丸に言った。
風丸は、服を着たままパラソルの下から絶対に出ないようにしながら

「着替えれないから、こうして退屈極まりない思いをしているのがお前には分からないのか?」

と、言って円堂の方を睨む。
すると円堂は

「別に女だってばれるぐらいいいじゃん。」

と、軽く言った。
現在進行形で男に戻れていない風丸にとって、海で泳ぐなどもっての他状態だった。
そのおかげで一人、泳ぎたいのに泳げないというもどかしい思いをしている。
そんな思いをしながら、泳いでいる奴らと円堂を恨めしそうな目で見ていると

「うわ〜ん!鬼道さんの人でなし!」

と、佐久間の泣き声が聞こえた。
何事だよと思って声のした方を見た瞬間に風丸は噴いた。
そこには鬼道に腕を引かれ、無理矢理女にさせられたであろうビキニ姿の佐久間がいたのだ。

「鬼道、お前何やってんだよ。」

と、ついツッコミを入れる風丸。
他の奴らは見なかった事にして、また、遊びだした。
そんなツッコミを入れてきた風丸に対して鬼道は

「一度、色っぽい水着姿の佐久間と海で遊んでみたかったんで、やってみたんだがどうかしたか?」

と、事もなさげに言った。
風丸は、マジで自己中心的な事をしてるなと思いながら、泣いている佐久間を憐みの目で見る。
すると、佐久間が

「風丸も同じ思いをしたらいいんだ!てか円堂、風丸も女の子にして、水着を着せて来い!鬼道さんが俺に着せたくて持って来たのが余ってるし!」

と、言った。
風丸は、裏切り者!と言った目で佐久間を見るが、佐久間の方も自分だけ助かるなんてそれこそ裏切りだろ?そんな目で風丸を見ている。
そんな屈折し始めた女(?)同士の友情を見て、周りは苦笑した。
でもって、円堂は凄く機嫌のいい笑顔を浮かべて風丸を強制的に連れて別荘へ行く。
誰かに助けを求めようにも、求めるだけ無意味な風丸は、泣く泣く円堂に屋敷に連れて行かれ、佐久間用に用意されていた水着ではなく、風丸の母が風丸用に用意していた水着を強制的に着せられた。
で、円堂は泣きわめく風丸を無理やり海に連れ出す。

「なかなか萌える水着を選びましたね円堂君。」

と、言ったのはメガネ。
現在、風丸が来ているのはビキニとかではなくスクール水着。
無論、風丸の母親が用意したものだ。

「確かにスクール水着は萌えるな。さすがは円堂だ。」

と、円堂を褒める鬼道。
風丸は日焼け止めを塗りつつ、いじけてしまっている。
で、風丸の横には風丸と同じくいじけてしまった佐久間がいる。
こちらも日焼け止めを塗っている。

「ま、まあな。にしても、ちょっと、犯罪級に可愛過ぎないか?」

と、円堂。
すると鬼道が

「確かに可愛過ぎるな。・・・・・・少し、悪戯してみたくならないか?」

と、言い出したのでメガネ達他、サッカー部員は、向こうの方にある浜辺で遊ぼうと言う事で移動を始める。
で、鬼道の提案に

「なる。物凄くなる。・・・・・・ちょうど日焼け止めを塗ってる最中だし、背中の方は俺らが塗ってやらないか?」

と、目茶苦茶何かする気満々の円堂。
全員が急いで移動した。
そして、異変に気づき、逃げ出そうとした風丸と佐久間を捕まえる二人。

「背中の方の日焼け止めは俺が塗ってやるから。」

と、言いだす二人に佐久間と風丸は全力で遠慮しますと言い出すのだが、二人はさっきまで座っていたシートの上にうつ伏せに押し倒される。

「円堂の変態、スケベ!セクハラだ!!」

と、叫ぶ風丸。ただ、暴れようにも円堂に押さえつけられ、どうしようもない。
でもって、佐久間も風丸と同じ目にあっているが、こちらは、風丸と違って大人しい。
きっと、鬼道の鬼のような言葉に、抵抗する気力を奪われたに違いない。

「うーん。こう言う悪戯するんだったら風丸もビキニにしとくべきだったかな〜。」

と、自分を罵ってくる風丸の言葉を無視しながら円堂は言った。

「まあ、脱がせちゃえば別に変わらないか。」

「待て!この変態!何をする気だ!!」

と、身の危険を切実に感じた風丸は叫ぶ。
すると円堂は鬼道の方を指さして

「あんな感じの事。」

と、言った。
見たくないなと思いつつも、これから自分に起こりうる惨劇を見ようとして、風丸は鬼道達の方を見る。
そして硬直した。

「ぁあ、鬼道さん。そんな所まで、塗る必要ないじゃないですか。」

「そう言うな。それに、気持ち良くて仕方ないんだろ?ここはもう、濡れ始めているぞ。」

「あ、ダ、ダメです。」

とりあえず、見なかった、聞かなかった事にするが、間違いなく、自分も似たような目に遭うのは確実だった。
風丸は、いかにしてこの事態を切り抜けるか、真剣に考える。
しかし、円堂から逃げ切れた記憶は、未だかつて一度もない。
でも、せっかく海に来たのに、海で遊ぶ元気さえなくなるような事をされるのだけは避けたい。
と言うか、せめて海で遊んでから襲って欲しい。

「え、円堂。せ、せっかく海に来たんだし、そう言うのは後にしようぜ。な?逃げれない訳だしさ。」

「内容によっては、考えなくもないかな。」

「な、なら、あれやってみよ。カップルの定番。海辺で追いかけっことかさ。」

と、必死に逃げようと無い知恵を絞る風丸。
すると、円堂が少しだけ考え込んで、

「風丸、発想が乙女だよな。」

と、言った。
風丸はなんと言うか、限りなくバツが悪くなり、黙り込んでしまう。
円堂はそんな風丸の頭を撫でてから

「いいよ。風丸がしたいなら、付き合うというか、まあ、俺もやってみたいなとは思ってたから、やろう。」

と、言った。
風丸は、そんな円堂の言葉に表情を明るくして、心の中で初めて逃げきれたとガッツポーズをとる。
すると、佐久間と鬼道が

「なんか、面白そうな事しようとしてますね。」

「なんだ、佐久間もしてみたいのか?」

「そ、そりゃあ、まあ、してみたいとは思いますよ。」

「なら、しようか。」

と、便乗してきた。
風丸は、さっきまで襲ったり、襲われたりしてなかったか?
そんな事を真剣に思ったが、口には出さない。
まあ、そんなこんなで何故か円堂と浜辺で追いかけっことか言う、時代錯誤な事をする事になった。


「佐久間!俺はお前を恨む!!」

と、走りながら風丸は叫ぶ。
すると、隣を走っていた佐久間は

「いや、まさか、冗談で言ったのに本気でするとは思わなかったんだって!!」

と、泣きながら佐久間は言った。
ちなみに、さっき捕まりそうになったせいで、水着が脱げかけている。
おかげで走り難い。

「捕まったらその場で、色々してもいいとか、何考えてんだよ!そう言うのは、俺と円堂がいない所でしろよ!!」

「だから謝ってるだろ!てか、こんなドラマチックじゃない決死の追いかけっこは嫌だ!」

「それは俺のセリフだ!せっかく海で遊んで、円堂から逃げきれるチャンスだったのに!」

「俺だって海に来たなら遊びたい!!でも、鬼道さんにされたいって言う願いもあったりする訳で。」

「死ね!お前、本気で死ね!」

そんな罵りの言葉を掛けながら風丸はひたすら走る。
でも、慣れない砂浜で、炎天下の中を走り回ると言うのは拷問にも近しい訳で、途中で佐久間共々倒れてしまい、日陰に急いで運ばれ、介抱されたのだった。
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