捧げ物

□真夏といえば?
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熱い。やる気がしない。
そんな事を言って成神はまた、練習を休んだ。
無論、そんな事をすれば寺門の怒りに満ちた怒鳴り声を聞く事になる。
ただでさえ熱くて仕方ない日に、そんな暑苦しくてうるさい寺門の声を聞いて、辺見や鬼道達は、減なりとなっていた。


鬼「辺見。頼むから、成神を練習に参加させてくれ。頭が痛い。」

辺「俺に言われてもな。あいつ、我儘大王だし、俺が言ったぐらいじゃこねーぞ。」

佐「黙れ。言い訳はいい。さっさと、鬼道さんのためにあの馬鹿を連れてこいよ。連れてこないから、お前に向かってシュート1000本放つぞ。」

辺「なんで俺なんだよ!」

源「お前が成神の恋人で保護者代理だからだろ。」

辺「勝手に保護者代理にするな!!あー、連れてくればいいんだろ、連れてくれば!でも、何が起きても俺は責任取らないからな!!」

周りに責め立てられな辺見は、理不尽だと心の奥で叫びながら、成神を捕獲しに行く。
たぶん、この時間なら、涼しい図書室で、昼寝をしているか、保健室で音楽を聴いているはずだ。
そんな、しっかり把握した成神の行動パターンを思い出しながら辺見は、成神を探しに行くのであった。


図書館へ行くと、中は冷房が利いていて涼しく、放課後にもかかわらず、何人もの生徒が本を読んだり勉強したりしていた。
割と、ざわついているが、うるさいと言うほどではない。
それでも、辺見としては、何故、こんな空間で昼寝なんて事が出来るのか、理解できなかった。
いくら涼しくても、こう、人が多いま所では昼寝する気にはなれない。
まあ、成神は特殊だからという事で、片づけてみるがいまいち納得がいかない。
そんな、何とも言えない気持ちでいると、3年生の図書委員が辺見に近づいてきて

「サッカー部の方ですよね?あの人、連れて帰ってもらえませんか?」

と、言って、持参した枕と図書室の椅子を8つほど組み合わせて、自分用の昼寝コーナーを作って、寝ている成神を指した。
辺見は、なんて傍若無人に、好き勝手やってるんだと心の中で呆れかえりながら

「すみません。今すぐ持って帰ります。」

と、謝った。
なんで自分が謝らないといけないのか、納得がいかない気がするのだが、なんとなく、謝っておくのが一般常識な気がしたので、何度か謝ってから、成神に近づく。
そして、気持ちよさそうに昼寝している成神に

「起きろ、馬鹿。」

と、言いながら、何発もの往復ビンタをお見舞いする。
すると、痛みで目を覚ました成神は、誰だよと不機嫌そうに目を開け、自分にビンタをくらわした相手を見る。
で、ビンタをして来たのが辺見だと分かった瞬間に機嫌よく笑いながら、

「起こすなら、こうやって、キスで起こしてよ。」

と、言ってから、辺見の唇を軽く奪い去る。
人前でキスをされた辺見は怒りと恥ずかしさで顔を赤くしながら

「この、大馬鹿野郎が!人前で何をさらすか!!」

と、叫びながら成神の頭をぐうで殴る。
成神は、思いっきり殴られた部分を抑えながら、

「酷い。ちょっとキスしただけなのに。」

と、言った。
辺見は、心の底から成神に対して殺意にも似た何かを抱きながら、成神を無理やり引きずっていく。
そして、腐女子の居た堪れない視線と、普通の奴らのうわーって視線と、何かが変な奴らのお熱い事でといった視線に耐えながら、図書室を後にした。


部活へと成神を強制連行している途中、辺見は成神に逃げられてしまった。
成神が素直に引きずられてくれたので、油断していたら、急に体当たりを食らい、手を離した隙に逃げられたのだ。
おかげで、ひたすら成神を探しまわる羽目になってしまった。この暑い日に、暑い廊下を歩きまわって、成神がいそうな涼しい場所を探すのは本当に面倒だった。
しかし、連れて行かないと、佐久間に殺されかねないし、寺門の鬱陶しい怒鳴り声を聞かないといけなくなるので、面倒だが探しまわった。
しかし、思い当たる場所を探しまわっても、成神の姿はなかった。

『あの馬鹿、見つけたら簀巻きにして、部活に連れてってやる。』

辺見は心の底からそう思った。
是が非でもこうなったら捕まえて、部活に強制参加させないと腹の虫が収まらない。
そうやって、暑い中にどす黒い炎を燃やしていると、一瞬目眩がした。
辺見は、これ、水分補給して少し体温下げないと倒れるよな。そう思って、水分を取りに行こうとしたら、目の前がグラグラになって、ばたりと倒れた。
辺見は、倒れる瞬間に、

「体調管理が出来ないとは情けない。」

そう、鬼道に冷たい目で言われるなと思ったのだった。


体調管理には気をつけていたはずなのに、熱中症で倒れるなんて情けないよな。
運び込まれた保健室で、介護されながら辺見は思った。
そういえば、誰がここまで運んで来たんだったっけ?てか、運んでくれた奴がわざわざ介護してくれてるんだよなと、半停止状態の頭で考える。
とりあえず、お礼ぐらいは言わないとな。そんな事を思って、身体を起こそうとするが、全くと言っていいほど体が動かない。
すると、辺見が起きた事に気がついたのか、辺見を運んできた人物が

「先輩、気がついた?」

と、言った。
その声から察するに、成神がここまで運んできてくれたようだ。
辺見は、なんで成神なんかに助けられてるんだよと自分で自分にツッコミを入れる。

「ジュース飲みながら先輩の後つけまわしてたら、急にバタンって倒れるからビックリしちゃったよ。」

と、言いながら成神は辺見に水分補給をさせる。
辺見は、なんで俺の後をつけてたんだよ。てか、それに気づかずに成神を探しまわってたって、鬼道達に知られたらいい笑いものになるな。
泣きそうな気持になりながら、辺見は思った。
でもって、自分だけちゃっかり水分補給しながら、歩きやがったのかよ。そんな悪態を心の中でつく。

「恵那先輩に、辺見先輩の頭に俺が投げたペットボトルが直撃して、辺見先輩は倒れたので休みますって、連絡入れといたから、部活は気にしなくていいよ。」

と、成神。
辺見は、それはそれで周りに何か言われるような気がしたが、自己管理が出来ず、熱中症になったと知られるよりかは断然ましだと思った。
なので、その嘘八百の言い訳に関しては、よくやったと心の中で褒めてやる。

「恵那先輩は馬鹿だから、欠席連絡入れるのは楽だよね。まあ、実はあれで本当は何もかも分かってて馬鹿な振りしてる腹黒じゃないかって説が一部の女子の間にあるみたいだけど。」

と、苦笑しながら成神は言った。
辺見は、その一部の女子って、腐で始まる女子なんだろうなとか思ったが、あえて聞かなかった事にして忘れる。
なんとなく、なんだかんだで頼れるまっとうな恵那のイメージが総崩れになって、嫌なのだ。

「先輩、あのね、明日から、ちゃんと部活参加するから、もう、倒れたりしないでね。というか、部活に参加して、先輩が倒れないように俺が先輩の事管理するからね。」

と、言いながら成神は辺見にギュッと抱きついた。
辺見は、暑苦しいなとかちょっと思った。
でも、成神が、自分を心配して部活に参加しようとしてくれようとするのが嬉しいので、頭をそっと撫でてやる。
すると成神は嬉しそうに笑いながら

「先輩。ね、キスしたくなった。ダメ?」

と、言った。
辺見は調子に乗り出したか。そう思ったが

「勝手にしろ。どうせ、当分は動けない。」

と、言って軽く承諾する。
すると、成神は辺見の唇に自分の唇を押し当てる。
重ねているだけの長いキスだった。
そして、キスを終わらせようとすると、辺見は物足りなかったのか、成神の頭を押さえつけ、再び唇を重ねさせる。
息苦しいキスを貪り続けた後、辺見は舌を成神の口の中に侵入させた。
成神は最初、嫌がったが口の中をかき乱されていくうちに、抵抗する気力を奪われ、そのキスに流されていく。
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