イナズマイレブン

□初めての出会いは?
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拙者と霧隠の出会いは、いたって普通だった。
戦国伊賀島小学校への入学式を霧隠が脱走して、捕まえたのが出会いだったのだ。
霧隠は、当時忍びになる事を嫌がっておった。それは今でもあまり変わっていないが、小さい頃に比べれば、幾分かはマシになった。
拙者はあの時、霧隠を捕まえた事で、色々と大変な目に会う事になるが、今では懐かしいとさえ思える。

そう、出会いは春。入学式の日だった。

拙者の家は、祖父が忍びだった。しかし、両親はいたって普通の民間人。
実にアンバランスな家だと同級生は言う。
忍びは代々技を受け継ぐために、長男、もしくは長女が親の後を継ぐ。
しかし、拙者の両親は忍びではなかった。
何でも祖父曰く、父には忍びとしての才能がなかった。との事だ。
元は名門の風魔家。しかし、父に才能がなく、戦国伊賀島中学を退学になって以来、落ちぶれかけていた。
それでも祖父は忍びとして生き、孫が生まれたら御家を建て直させると意気込んでいた。
そして生まれてしまったのが拙者であった。
別に拙者は忍びになる事を嫌とは思っていない。
むしろ、祖父のような立派な忍びになりたいと思っている。

だから、最強にして最高の霧隠一族の跡取りとして生れた霧隠 才次と同じ学年だと聞いた時は、本当に頑張らねばと思った。
しかし、霧隠は拙者が抱いていたイメージとは余りにも、余りにもかけ離れた人物であった。

霧隠一族と言えば、全員が小、中、高を首席で卒業し、引く手数多のエリート忍者。
その姿を見ることは難しく、在学していた時代から、姿を見る事はなかったと言われるほど謎多き天才一族。
まさに、憧れるべき最高の忍びだ。
だから、霧隠もそんな完璧な忍びの息子ゆえに、姿を見るのは難しいと思っていた。

しかし、あいつはあっさりと姿を見せてくれた。
それも、入学式を滅茶苦茶にするという困った方法で姿を見せたのだ。


入学式の日。全校生徒が集まった体育館で

「誰が忍びなんぞになるか!人に使えるなんて真っ平だぜ!!」

派手な爆発音でそう叫びながら、霧隠は姿を現した。
衝撃的だった。
忍びとは、姿を見せない事を信条とする者しかいないと、言わざる得ないのに、霧隠は派手に姿を現した。

「才次!!この馬鹿、何やってんの!!」

そんな保護者の声も無視して霧隠は辺り一帯に、痺れ薬をまき散らして、校舎に仕掛けた爆弾を爆発させまくった。
まさに、テロ。
そう言わざる得なかった。
そして拙者は、幸か不幸か、その被害に遭わなかった。
戦国伊賀島という忍びの学校に入学したが故に、入学式でさえ、忍びとしての試しがあるに違いないと油断していなかったのだ。
まあ、それは中学からだったので、拙者の取り越し苦労であったが。でも、それを知らなかったが故に、

「誰かその馬鹿を捕まえてください!」

そんな声が騒ぎの中で聞こえた時、拙者は、これも試練とか試験なのだろうと思い1人、動いていた。

「お、俺様とやり合おうってのか?いいぜ、お前なんか軽く倒してやるよ。」

と、霧隠は自信たっぷりに言った。
拙者は、この同い年ぐらいの少年の実力は、拙者より下だと思った。
事実、この時実力的には拙者の方が上だった。
しかし、逃げ足に関しては霧隠の方が一枚上手でござった。
体術や必殺技では勝てないと分かると霧隠は煙球を使って、見事に逃げた。
拙者は、それを追いかけて行った。
しかし、あいつのスピードは、かなりの物。当時の拙者のスピードでは、全く追いつく事が出来なかった。
だが、忍びたるものいかなる事態にも素早く対処すべし。
拙者は、父が唯一習得できたと言って教えてくれた、蜘蛛の糸で霧隠の捕獲に成功したのでござる。

「ちくしょーー!こんな奴に捕まるなんて!」

と、糸に絡まってもがきながら霧隠は叫んだ。

「っち。おい、お前。名前はなんだ!俺様を捕まえたんだ。相当の実力者だろ!名前を教えろ。必ずその首もらってやる!」

と、わめき散らす霧隠。
拙者は、態度がでかい奴だと思ったが、

「拙者は風魔 小平太。はじめまして、霧隠 才次殿。」

と、言って手を差し伸べた。
すると霧隠は拙者の手を取り、

「へー。俺様を知ってるのか。ま、俺様ぐらい有名なら、知っててもおかしくないか。」

と、やっぱり自信たっぷりな口調で言った。
拙者に捕まった事を全くと言っていいほど自覚していない。
本当に、こんなのがあの、霧隠一族の時期跡取りなのだろうか?
本気で疑ってしまった。

「才次!この馬鹿!入学式で何やらかしてくれたの!!」

と、言って急に1人の女人が出現した。
霧隠とよく似た女人で、拙者はその女人に見覚えがあった。
歴代の首席卒業生が一人、霧隠 才奈であった。
かつての首席卒業生の中で、唯一写真に写っている人物でござったのでよく覚えていた。

「姉ちゃん!なんでいるんだよ!!」

「あんた、せっかく入学式見に来てやったのに、なんてことしてるの!この馬鹿!!」

と、言って才奈は霧隠の腹を力いっぱい蹴り飛ばした。
過激な人だと思った。

「あなた、よく内の馬鹿を捕まえてくれたわね。ありがとう。」

「は、はぁ。」

「ね、あなた一年生でしょ?よかったらこの馬鹿の面倒見てあげて。というか、捕まえたから、面倒見てちょうだい。よろしくね。」

と、才奈は言いたい事だけを言って姿を消してしまった。
全くもって、自分中心な女人でござった。

「くっそ、あの鬼女。思いっきり鳩尾に入ったぞ。」

と、苦しそうに、蹴られた所を押さえながら霧隠は言った。
いやはや、自業自得ゆえ、何も言えない。
しかし、本当にこの馬鹿があの、霧隠一族の跡取りなのであろうか?
本当に、理解できない。

「ふん。まあ、俺を捕まえた事は褒めてやるし、人生においてライバルは必要だ。お前を俺様のライバル一号に任命してやる。ありがたく思え。」

と、上から目線の霧隠。
蹴られた所を殴ってやろうかと思ったが、大人げないので止めた。
代わりに、

「では、今日からよろしく頼む。」

と、言って右手を差し出す。
すると霧隠は少し照れくさそうな表情をしてから、その手を握り返してきた。
これが、拙者と霧隠の出会いであり、ひたすらに続く腐れ縁の始まりであった。
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