その他の物語

□ハッピーバースデー
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4月12日。

とりあえず、源三郎に許しを貰って、昨日と同じ公園に来た黒城。
勝舞は、ミミとれく太と一緒にいた。
何故、あの凶暴凶悪ぶりっ子女がいる。そう思う黒城。
さり気にミミが苦手だ。

「お、黒城。遅かったな。」

と、黒城に気がついた勝舞が駆け寄って来た。
なぜわざわざ走って寄ってくる。
どうせ、そっちに行くのに。

「お前と違って忙しいからな。」

「ああ、おかまバーのバイトか。」

と、まだ言う勝舞。
とりあえず、ムカつくので頭をグーで一発殴る。
何故、俺をおかまバーでバイトしている事にしたがる。恨みでもあるのか?そんな事を思った。
でもって、勝舞がこっちに来たから、ミミとれく太もやって来た。

「死神君、バイトしてるんだって?なんのバイトをしているのかしら?」

と、ミミ。
こいつら、バイトしている事言いふらしやがったな。てか、バイトしている姿と、バイト内容だけは知られたくない。
黒城は、ミミをどうやってかわそうか考える。
あまり、下手に無視すると黄昏地獄拳を喰らってしまう。
それは、限りなく遠慮したい。

「勝舞君の話だと、いかがわしいバイトだとか。」

と、ミミ。
おい、何嘘を吹き込んでやがる。
そう真剣に思った黒城は勝舞の事を一発殴る。
まったく、こいつは本当にろくな事をしない。

「黒城君!!いくら、天涯孤独の身だからと言って、体を売るのはよくない!!」

と、やたらと騒がしい声で走って来ながら叫んだのは、ナックだった。
お前、どれだけの奴に嘘を吹き込んだ。とりあえず、もう一発問答無用で勝舞を殴っておく。

「俺がいつ体を売った!てか、そんなバイトはしてねぇ。」

と、馴れ馴れしく引っ付いてこようとするナックを蹴り飛ばしながら黒城は言った。
まったく、どいつもこいつもうざい。

「そこまでひた隠しにしなくてもいいんだよ。確かに売春行為は犯罪だ。しかし、誰にだって間違いはある。」

と、熱血教師的発言をするナック。
待て、おかまバーより話がヤバくなってないか?
てか、どんな嘘を流した、勝舞。
批難の眼差しを勝舞に向ける。
しかし、勝舞の方もなぜか目を丸くしている。
そして、黒城の方を見ながら

「お前、そんな事までしてたのか!」

と、言った。

「してねぇ、つってんだろうが!」

と、否定する。
何故、こんな事になっている。と言うか、誰かが妙な噂を流しているようだ。
勝舞ではなさそうだが、なら、一体誰だ?
まさか、れく太か?
そんな疑惑を胸にれく太を見るが、れく太も驚いている。
やはり、違うのか?なら、一体誰が変なうわさを流した。

「黒城君、何でも、メイド喫茶でバイトしているんだって!!」

と、走り寄って来たのは白凰。
まてや、ある意味で一番内容が嫌だったぞ。
てか、そんな変な嘘に流されてるこいつらってどうなんだよ。
そして、嘘を流した奴は殺す。そう、真剣に思った。

「誰が、メイド服なんか着るかーーーー!!!!」

と、つい、怒りにまかせて叫んでしまった。
まあ、叫びたくなる気持ちは分かる。
にしても、なんでメイド喫茶。

「え、違うのかい?せっかく、メイドとして雇おうかと思ってたのに。」

限りなく、果てしない問題発言をする白凰。
ミミの殺気が痛い黒城。
てか、白凰ってそんなキャラだったか?真剣に悩む。
なんか、今自分が起きている自信がなくなった黒城は、こっそりと、手をつまんでみるが痛い。夢とかではないらしい。

「誰かが妙なうわさを流しているようですね。」

と、冷静に状況を判断するれく太。ああ、まともな奴が一人でもいるって素晴らしいな。そんな悲し過ぎる事を黒城は思った。

「まず、噂の出所を探しましょう。ミミさんは、バイトの話をどこで聞きましたか?」

と、れく太。

「私は、勝舞君から聞いたわ。」

と、ミミ。
やっぱり、噂の出所は勝舞なのか?黒城は殺意の籠った眼差しで勝舞を見る。

「でも、ナックとかには何も言ってないぞ。」

と、勝舞。
黒城の殺気には気づいていない。
にしても、ナックとかって事は、他の奴には言ったのか?
どっちにせよ、勝舞は地獄送りにしてやると心に誓う。

「じゃあ、ナックさんは誰に聞いたんですか?」

と、れく太はナックに聞いた。
すると、ナックはポケットから数枚の写真と手紙を取り出す。
嫌な予感と言うか、不愉快な気配がする写真を黒城は見る。
映っていたのは、黒城自身だった。
しかし、なぜか見覚えのないおっさんと妖しげなホテルへと入っていく姿だ。
全くもって身に覚えのない写真である。でもって、ほかにも何枚かあるのだが、それらは見せようとしないナック。
一体どんだけヤバい写真を持ち歩いてやがる。いや、それ以前に、誰がそんなものをナックに送った。

「さっき、家のポストに入っていたのを見つけたんだ。」

と、言った。
写真の内容を見て、一同が黒城を見る。
黒城は何かが切れそうになるのを必死に抑えながら、

「絶対別人だ。もしくは、合成写真だ。」

と、きっぱりと言った。
でもって、写真とセットになっている手紙を見る。
手紙にはこう書かれていた。

「一人の少年が道を踏み外しています。あなたの友人のようですが、もし、この友人を助けたいなら1000万払ってください。さもなくば、この写真をネットに流し、街中にばら撒きます。」

どうやら、それでナックはやって来たらしい。
にしても、なぜナックにそんな手紙と写真を渡したのだろうか?
はっきり言うが、ナックはそこまで金持ちではない。てか、平凡なナックにそんな金出せる訳がないのだ。

「なるほど。なら、白凰様は誰に聞きましたか?」

と、れく太。
ナックが見せようとしない残りの写真を奪おうと足掻く勝舞は完全無視だ。
でもって、黒城はなんか写真からヤバそうな気配がしたの、で勝舞に見せないようにと言うか、燃やすか、シュレッターに掛けようと思い、写真を奪おうとする。
でも、ナックがなぜか渡してくれない。

「僕はこんな写真と履歴書的なのを送られてきたよ。」

と、言って一枚の写真と履歴書を出した。
見るとメイド服姿でメイド喫茶にいる黒城が写っていた。
でもって、履歴書には黒城の筆跡で色々と書かれていた。
言っておくがそんなものは今まで一度たりとも書いた事はない。
ずっと、源三郎にこき使われているのだ。

「だから、採用しようと思って来たんだけど、違うみたいだね。」

「当たり前だ!俺様がメイド服なんぞ着る訳ないだろうが!」

と、メイド姿の写真を奪おうとするが白凰は軽々とかわした。
でもって、それ以上しようものなら黄昏地獄拳を喰らわすぞと、ミミの目が訴えていたので諦めた。
ある意味で人生最悪の日だ。

「あれ、黒城さんは明日が誕生日なんですか?」

と、書いた覚えのない履歴書を見ながられく太は聞いた。

「まあ、な。」

何故、その履歴書に書いてある内容が本当なのか?何故、自分の筆跡なのかは全く分からない。
だが、書いてある事は本当なので一応頷く。

「なら、誕生日パーティーしましょうよ。」

と、言ったのはミミ。
女子はイベント事をするのが好きだ。
でもって、なぜかその場にいた黒城以外がミミの提案に賛成している。

「するな。めんどくせぇ。」

と、黒城。
こう言う賑やか和やか空気は死ぬほど苦手だ。
嫌な思い出と幸せだった思い出が一緒に蘇ってくる。
特に、誕生日パーティーなんかは思い出したくない。幸せな思い出を思い出せば思い出すほど、苦しくなる。

「照れなくてもいいのよ。それに、全部私達が仕度するもの。」

と、ミミ。
止めて欲しい。そう言う勝手な事は。
それに、明日は丸一日バイトだ。
時間なんぞない。

「明日は、一日バイトだからパス。てか、くだらない事するな。」

「なら、そのバイト先でお祝いしてあげる。」

と、最悪極まりない事をミミは言った。

「いかがわしいバイトじゃないなら、平気よね。」

と、笑顔で言った。
こいつ、そうやって理由をつけてバイト先を見つけ出す気だ。そう黒城は思った。
だが、大人しく参加する訳にも、バイト先を知られる訳にもいかない。
なにせ、源三郎は休みを取る際は、最低でも2日前には言って置けといつも口うるさく言っているのだ。
今日だって、ちょっと小言を言われてまで来たのだ。これ以上、急な休みを入れたら殺されかねない。

「絶対に教えないからな。」

と、黒城は言った。

「なら、死神君のバイトはやっぱりいかがわしいバイトって事になるわね。」

と、脅しのような事を笑顔でミミは言った。
これだから、女ってやつはと、黒城は思うが、どうしても、ミミの黄昏地獄拳は喰らいたくないので余計な発言は控える。

「さあ、どうするのかしら?」

「・・・・・・。」

どうしろって言うんだ!誤解を解消できないまま放置するか。そうでなければ、バイト先を教えるかだ。
いっそ、死を覚悟で源三郎に休みをもらうか?
いや、3つ目の選択肢だけは無理だ。
それは、ミミの黄昏地獄拳以上に激痛とかを味わう羽目になる。

「どうするも何もない。勝手に変なバイトしてると思いこんでいればいいだろ。」

もう、それしか選択肢がない。そんな気がした黒城はやけくそ気味に言った。
そこまで喫茶店でバイトしている姿を見られたくないのか?
答え 見られたくない。

「ふーん。なら、学校のデュエル友達全員に言いふらすわね。」

と、さわやかな笑顔でミミは言った。
まてや、そんな事したら恐ろしく広がるよな?確か、女子の情報網は恐ろしいはずだ。あの源三郎が青ざめながら言ってたから間違いないだろう。

「ミミちゃん、それはやり過ぎだって。」

と、勝舞。
一応、助けようとしているのか?

「せめて、クラスの友達にして置けよ。」

助けようとしてなかったか。むしろ、悪くなっている気がする。
どうしてこいつらはこう、嫌がらせのような事をするのだろうか?本当に殺意が沸く。

「二人とも、虐めはダメですよ。」

と、れく太。
やっぱり、こいつだけか、まともなのは。
白凰も余りまともじゃない気がするし、ナックもダメな気がするなか、唯一普通でまともに見えた。

「虐めじゃないわよ。」

と、しれっと言うミミ。
黒城は心の中で、立派な虐めだと言っておく。
それにしても、噂を流した犯人探しから遠ざかっている気がする。

「虐めですよ。立派な。と言うか、誕生日パーティーの件は後で話し合うとして、まずは、この妙な噂の犯人を探しましょう。」

と、れく太。
後で話し合うの部分が気になるが、とりあえず、本題に話が戻るのは大歓迎だ。
本当に、れく太だけがまともだ。あと、最悪と言うか、惨劇的にダメだ。特に、ミミと勝舞。

「たぶん、ナックさんが貰った手紙の主を探すのが一番いいと思うんですが、宛先人は不明なんですよね。」

と、ナックの持っていた手紙を見ながられく太は言った。
住所も何も書いていない。てか、強迫状なのに何も書いてないっていいのか?
どうやって、金を受け取る気だったのだ?いや、てか、どうやってあんな写真を作り上げた。色々と疑問が残る。

「あれ?この字って牛次郎君の筆跡によく似ているね。」

と、白凰が言った。
確かに、この汚い字は牛次郎の字と大変似ていた。
てか、これが牛次郎の手紙ならすべて納得がいく。
もし、牛次郎が昨日の勝舞と黒城の会話を聞いていれば、妙なうわさが広がっている事も、危ない合成写真がナックに送られるという不愉快な事態も、白凰に送られた履歴書と写真の謎も全て解ける。
あいつなら、合成写真を作る事ぐらい朝飯前だろうし、黒城の個人情報を調べ、筆跡をまねた履歴書の作成も出来るだろう。

「おい、あのゴミデュエリストは今、何処にいる?」

限りなく、静かな怒りと殺意を宿しながら黒城は聞いた。
いつもと違って、怖いんですけど。てか、ここまで静かな怒りに満ちた黒城は初めて見た。

「確か、隣町の裏デュエル闘技場にいるはずよ。」

と、ミミが言った。
隣町の裏デュエル闘技場か。確か何箇所か出入り禁止を言い渡されていたな。闘技場にいた賞金稼ぎのデュエリストを潰したせいで。
そんな事を考えながら黒城は急いで隣町へと向かう。
で、なぜかミミや勝舞達も付いてくる。
何故、付いてくると言いたかったが、今はそれどころではない。
一刻も早く牛次郎を見つけ出し、地獄に送る。そうしないと、また、変なうわさが広がりかねない。
とにかく、黒城は急いで隣町へと向かう。
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