捧げ物

□忘れたい日
2ページ/6ページ

始まりは、いつだったのだろう?
正確な始まりの日付は覚えていない。
ただ、その日は鬼道と佐久間が雷門の偵察でいなかった気がする。
鬼道がいないとちょっとだけ、全員が練習をサボりがちになる。
それで、ちょっと遊び半分に洞面とか大楠とリフティングの回数を競って遊んでいた。
そんな時にふと、総帥が見学している部屋から、一人の男がこちらを見ていた。
そして、目があった瞬間に身体が冷たくなって、心臓が止まるような、そんな感覚が体中に走った。
一瞬、自分の周りの時間が止まったような錯覚に陥って、ボールの動きが凄く遅く感じられた。
まるで、自分の周りだけ重力が重くなって、時間の進みが遅くなってしまった感じだ。
でも、男が目を離した瞬間に時間が元に戻って、感じていた冷たさも、心臓が止まるような感覚も消えた。
不快な何かを覚えたが、それを辺見はその時、気のせいだと言い聞かせ、周りに何も悟られないようにした。
何故、そんな事をしてしまったのかは分からない。
ただ、もし、この時にその感覚を、その男の事を口に出していたら、あんな目に遭わずに済んだかもしれない。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ