☆BLEACH☆

□泡沫の記憶
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『冬!』

眼を閉じればいつでも聴こえてくる懐かしい声。一片の曇りもない澄んだ声。
その声の持ち主は今、自分の目の前にいる。ずっとずっと捜して、やっと手の届くところまで来たと思った。思ったのに…。

「朱音…」

初めから神なんて存在信じてなどいない。
もし神がいたらこんな仕打ちはひどすぎる。しかしこの時、初めて祈った。

「頼む…嘘だと言ってくれ…っ!」

あろうことかたった一人の妹、朱音は記憶を奪われ、感情を失い、氷より冷たい瞳で自分を見下ろす。
自分らしくない震えた声。伸ばされた手はやっと掴んだと思ったのにそれは振り払われてしまった。
腹にある傷の痛みなんて感じない。今は現実を受け入れるのが精一杯だ。

「朱音、様……私の声は、もう、届きませんか…っ?」
「朱音、返事をしろ!!」
「………」

朱音は答えない。言葉で返さない変わりに朱音は霊刀を構え向かってくる。

「くっ!」

寸前のところで八方に散り避けたが、居た場所は霊刀の破壊力でえぐれている。
冬獅朗を支える朱雀は覚悟を決めたようにぐっと瞳を強く閉じた。

「もう…朱音様ではないのですね…」
「す、ざく…?」

朱雀は冬獅朗と離れその手に光を宿しどこからか刀を出した。
ぐっと握り締めるその手と開いた瞼の下に宿した眼光は朱音を捕らえた。

「せめて…苦しまれないように…」
「待て朱雀!!何をする気だ!!」

振り返ることをせず、怒鳴った冬獅朗に淡々と告げた。

「朱音様を…葬ります…」
「ダメだ!!」

朱雀は冬獅朗の言葉を受け入れず、真っ向から向かってくる朱音を受け止め反撃していく。
見ていると一護も参戦して一緒に朱音と戦っている。

「黒崎!!」
「こいつはもう…朱音じゃねぇ!!」

悔しそうに唇を噛み締め叫ぶ。卍解しているところをみると本気で朱音を殺しにいっている。
さすがに二人相手はきついのか朱音が体制を崩し倒れた。ここぞとばかり一護と朱雀は仕留めよう振りかざした。
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