□ILOVEYOU
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「イケメン。堂本拓也って知らねぇ?」

「えっ…」

「悪い悪い。んー何処に居んのかなぁー」

いいい今こいつ・・・俺の名前を言わなかった!?
俺は栗色なんか知らねぇぞ!?
全くの初対面だ!!

「なななななんで探してるんだ?」

あまりの驚きにどもってしまった

栗色は半分笑いながら答える

「何動揺してんだよ〜。
そいつさぁ、俺が始めて「あぁ、こいつには敵わない!!」って思わされた奴なんだよ だから探してんだ」

何言ってんだよ…

「その堂本は本当にこの学校に入学したのか?」

勝手に口が動く
勝手に口が会話を進める

「あぁ!!絶対にここにいる!!」

栗色は今まで以上に笑った
まるで堂本拓也を知っている事が誇らしいとでも言うように

…何を言ってんだよ…
何を言ってんだよこの栗色は!!
敵わないなんて最初から自分で言ってどうすんだ

いや…そんな事よりも違うんだ…!!
違うんだよ…栗色…!!

「探し出して…会って、もう一回勝負するんだ!!」

「…サッカーで、か?」

栗色はきょとんとした

「あれ?俺サッカーって言ったけ?」

「……」

こいつもサッカーか…
どいつもこいつもサッカーサッカーって…!!
一体何なんだ!!

結局こいつも…

「く…ははははっ…ははははっ!!」

「…どうしたんだ…?おい…」







俺は残虐的に笑う
こいつの心を俺は今から踏み躙らなきゃいけないから

気に入ったこいつの心を

「・・・いい事教えてやるよ」

「いい事?堂本拓也についてか?」

「あぁそうだ」

「えっ!?マジで!?」

栗色は俺がたじろぐ位顔を輝かせた

「・・・・ッ。・・・あぁ」

くっそ・・・。言え言うんだ

栗色は友達でもなんでもないだろ『あいつら』より大事なのか?
違うだろ?言え!!言え!!

「・・・・堂本拓也はサッカーを辞めたんだ」

「・・・・・は?」

「あいつは弱虫だ。最低のゴミ虫だ」

栗色の顔が鬼のような顔になっていく

そうだろう自分の探している相手をこんな風に言われたら誰だって怒るだろう

「だから君の探している『堂本拓也』はもういない」

「なっ・・・!!お前・・・ふざけた事言ってんじゃねぇぞ!!」

栗色の拳がプルプル震えている
額の血管なんて今にもブチ切れて殴られそうだ

今のこいつに殴られたら顔の骨折れそうだと思える程キレている

恐らく栗色はこの城川高校に来て一緒にサッカーをしたかったんだろう
わざわざ違う学校の俺の進路まで調べて

だけど栗色の望んだ俺は来なかった





だって『堂本拓也』は死んだんだから





「残念だけど・・・事実だから」

「・・・もういい喋るな。最低のゴミ虫はお前だ」

遂にキレたのか栗色は俺に殴ろうとしてきた



ーーーー・・・けど 遅かった



俺はあっさりかわした かわせてしまった

「おっお前・・・!!普通の奴が、かわせるワケない・・!!」

栗色はまるでお化けを見るような目で俺を見た

「お前、誰だ!?何なんだ!?」

「ていうか俺的には君のほうが気になる」

完全にかわせたと思っていたのに避けきれなかった
あれには肝がひえた

動体視力には自信があるのに

栗色はぐらかされたと思ったのか、顔を真っ赤にして叫んだ


「俺の名前は勝馬涼汰楼だ!!!」



「勝馬・・・涼汰楼・・・・」

勝馬・・・勝馬・・・・

どこかで聞いた事あるな・・・

いや・・・何回も聞いているその名前は・・・

確か・・・・その・・・栗色の髪は・・・

・・・・・あぁ あの勝馬涼汰楼か

勝馬 涼汰楼 こいつのいたチームは勝馬のおかげで何回も試合に勝った。(と言われている)

昔に何回も当たって、勝馬のせいで苦汁を嘗めさせられてきたか

だけど、俺のいたチームと初めて戦った時に偶々俺がシュートを決め、あいつのチームが負けた

ただそれだけなのに・・・

何でそんなにも・・・・

「だから!!お前は一体誰なんだよ!!堂本拓也の事を貶して!!」

「・・・・ッ」

何を迷ってるんだ・・・言え・・・ここまで言ったんだから言うしかないだろ

「・・・・。
君が会いたい、会いたい言って下さっている 堂本拓也だ」

「・・・・えっっ」

勝馬は、信じられない信じたくないという顔をしていた

まぁそうだろうな・・・

今まで話していた男がその『堂本拓也』で

その男はもうサッカーを辞めていて、名前を明かさないで『堂本拓也』を貶していたんだから

そんな最低男がずっと探していた『堂本拓也』なんて信じたくもないだろう

「顔は覚えてなかったんだな・・・。俺も勝馬君の顔は覚えてなかったけど」

「・・・・・」

「安心してくれ勝馬君 君は俺よりずっと上手い」

呆けてる勝馬の顔を見ていると申し訳なくなって背を向けて立ち去ろうとした

もう俺に失望した顔を見ていたくなかった

俺はいつだって弱虫だ


「勝馬君 ゴミ虫はお前だって言ってただろ?俺もそう思う」

「・・・・んで」

勝馬君が背中の向こうで何か呟いた

だけど、俺は振り返らない

そのまま歩き始める

「なんで・・・なんで・・・!!辞めたんだよ!!
堂本ぉぉぉぉぉぉ!!」








俺はそんな叫びを無視して、もう入学式が始まっている体育館へと急いだ

本当に弱いな俺も・・・。
辞めるって決めたからには、逃げちゃいけないのに

勝馬から逃げちゃいけないのに



俺は勝馬の性質を見抜けていなかった

もっと酷くきつく言っておくべきだった

俺はサッカーなんか二度とやらないって

俺の前に二度と現れるなって

だから諦めてくれって

言っておくべきだった




 
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