壱
□狂気を分かち合おう
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上を見上げれば眩しい太陽
だけど美しい空模様は見えない
もう目は見えてないからだ
無知な俺には分からないが大量に出血すると何も見えなくなるのだ
初めて知った
せり上がってくるものを吐き出すとそれは真っ赤な液体だろう口から出てきた
人間が口から熱いものを出すという事は死期が近いんだろう
だけど気にならない
俺は動いちゃいけない
そんな事わかっているが俺はもう自分の事なんか大事じゃない
俺はズリズリ動いて何か物が当たるまで動く
ガツン
そんな音がした気がした
勿論そんな派手な音じゃないだろう
瀕死の俺にはそれ位が派手な音に聞こえた
「あ・・・・」
やっと触れた やっと触れられた・・・
「・・・・!!愛!!」
「・・・・潤・・・」
「がっ!!」
愛が、俺を刺した。
多分包丁か何かだろう
「あたしは潤を殺さなきゃいけないんだから・・・・」
「愛!!俺は死んでもいい!!もう死ぬだろう!!」
「そっか・・・じゃもう・・・潤を殺さなくてもいいのか・・・」
「愛・・・!!死なないでくれ!!」
「・・・何を言ってるの?今まさに死にそうなのは潤じゃない」
「あぁそうだ!!」
「あたしが今どこにいるかも分からないのに・・・あたしを殺すつもり?」
「違う!!俺の話を聞け!!」
「煩い!!」
「うぐっ!!」
横脇腹を蹴られた
「そんな誰から見ても瀕死だって分かるのに・・・何で喋れるの?」
「愛!!」
俺だって何でこんなにも叫べるかは謎だ
でも俺が今必死にならないと・・・愛は・・・!!