□ILOVEYOU
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人間は人に言えない何かを皆抱えてる


それは人から見れば小さい事かもしれない


下らない事かもしれない


もしかしたら自分一人では解決出来ない事かもしれない


そしてそれは本人にとってはとても大切な事


何かを他人に打ち明ける力と


それを与えてくれる人物を見つけれる事はとても幸せな事だと思う


何年掛かっても人はその人を見つけられると俺は思うんだ





高校一年生の春 入学式

俺 堂本拓也が皆出逢った季節

俺が最初に出逢ったのは、俺の…大事な大切な親友だった




「最低っ!!」

バッッッシン!!

いっそ清々しい程に栗色の髪の男は女の子に叩かれていた

あの髪色…多分校則違反だと思う

俺は入学式を行う講堂に行こうとしたが何故か迷子になって運の悪い事にその場面に遭遇してしまったのだ

「…気ぃすんだだろ。さっさと消えてくんない?」

栗色は女の子の方も見ずにどうでも良さそうに答える
見てなくてよかったかもしれない
きっと女の子は傷ついた

いやもう傷付いてるはずだ

「何それ!?人を舐めんのもいい加減にしてよ!!」

だけど女の子は怒る
栗色と別れるのがいやなんだろう

「はぁ…この前から言い掛かり付けて来る奴が何言ってんだよ…」

「あたしがこんなに言ってんのに何も思わないの!?」

「あぁ。尻軽女が吠えたってどうも思わない」

「…ーーーっっ!!」

堪えきれなくなった涙を流しながら女の子が手を振り上げる

あ、やばい…

体が勝手に動いて栗色の前に飛び出た




バコッッッ!!




「「!!??」」

「いった…」

「……何やってんだよ」

「はははっ…ごめん。
なんか君が危ないと思ったら体が勝手に動いてさ」

それに栗色が鉄仮面の裏は傷付いたように見えたんだ

痛い…。
口が切れて血が出てて…最近の女の子って拳で人を殴るんだ…怖い

「ごごごごごめんなさい!!大丈夫!?」

「あ…うん。大丈夫だよ…」

「早く体育館行った方がいいんじゃないの?っていうか行け
お前の顔なんて見ていたくもない」

またそんな辛そうに…

「あんたに言われたくないわよカス!!」

そう言って走り去っていった女の子は振り向かなかった

「あぁそうかい」

まるで何も思っていなさそうに栗色は吐き捨てた

キツイな…この人…自分にも他人にも

「誰だか知らないけど大丈夫かぁ?…ったくあの尻軽は…」

栗色はさっきとは打って変わって
とても人懐っこい笑顔で申し訳なさそうに謝った

こっちが本当なんだろう
なんだかそんな気がする

「悪かったな。巻き込んじまって」

「いや、俺は別にいいけど…ていうか血出てる」

俺は栗色の口の端を指差した
…あの子さっきも拳で殴ってたのに…怖い…

「うっわ!!最悪…ここの監督すげー怖いって噂なのになぁ」

監督?スポーツ推薦の人なのか…?



この学校、私立城川高等学校は県内トップと言われている超進学校だ

大抵は推薦入学で、テストはあるがこれは成績を見るだけで入学試験ではない
成績がいい者、特別特待生には入学金と授業料免除があるけど、これは五名だけだ

そしてスポーツ推薦
これは一般的な推薦だ。だがハードルが高すぎてそんなにいない

勿論一般でも受け付けているが倍率が五倍なので、まあ受からない

因みに俺にもスポーツ推薦が来ていたけど、とある事情で推薦を断って一般を受けて合格した

なんでそんな面倒な事をするんだ。なんでそんな勿体無い事をするんだ。と回りに聞かれたが俺は親にしか言わなかった

そして、俺は受験で優秀な成績を出し特別特待生になれた
その為に一般で受けると決めてから血へドを吐く思いで勉強を続けてきた

「ちっ。いってぇな…」

口が切れている事に気付いた栗色は煩わしそうに制服の裾で口を拭った

「口濯いだ方がいいって」

「別にこのままでも平気だけど」

「口内炎できるぞ」

誰だって口内炎は嫌だ
俺はなったら無気力になる位萎える

栗色も嫌なのか今まで以上に顔を歪めた

「えぇー…!!でも水道なんかあるか?」

「さっきトイレがあったから、タオル濡らしてくるからそこにいてくれ」

几帳面の母に感謝だ
タオルやちり紙を常持って行かないと煩いのだ
まるであの歳を取らない母は


「んー任せた」

俺は踵を返して、来た道を戻る
途中にある男子トイレに入り、蛇口を捻って持っていた青いタオルを濡らす

何で俺は今日始めて会った男にこんなに…

…人恋しいのか?寂しいのか…?
誰も自分の事を知らない高校に入って、
誰も俺の罪を知らない奴と馴れ合おうとしてるのか?

なんて図々しい…。こんな自分に嫌気が差す

なんで、待っていろと言ったんだ…
俺はタオルを絞り便所を出て来た道を戻る

戻ると切れた口内が傷むのか口を押さえていた

「あぁ、悪かったな。手間掛けて」

「気にするな」

俺はタオルを栗色に手渡す

「サンキュー」

栗色は俺からタオルを受け取った

タオルで押さえる栗色を片目に何気なしにポケットから携帯を開く

…入学式は九時からだったよな…

丁度、今 九時だ。絶対に間に合わない

柚に怒られる…

もしかしたら走れば間に合うかもしれないが…栗色を置いていくわけにもいかない
初対面の男と一緒に仲良く入学式を欠席だ
後に響かなければいいが…

「おい」

「どうした?」

「入学式に遅刻した」

「え?マジで!?くっそ最悪」

「・・・・」

最悪といいつつ別段気にした様子はない


「別にいいけど。っていうかお前格好いいな」

「……はぁ!?」

イキナリ何を言い出すんだ。この栗色は

「よく女子にモテるだろー?中学の時は毎日告白されてたりして」

「そんな漫画みたいな事ある訳ないだろ」

しかも少女漫画じゃないか?その設定
よく母さんが弟達に自分の妄想を吐き出しているのを隣で聞かされているから知っている

「えっ?じゃ何回?」

「なんでそんな事言わなきゃいけないんだよ」

恥ずかしいだろ
友達に言うだって恥ずかしいのに…
…トモダチな

「イケメンって何回告白されて来たんだろうと思って」

まだいうか
それに言う程 俺、イケメンじゃない!!

話題を逸らせないと悟った俺はこの恥ずかしい話に乗った


「そんなに多くない」

「じゃ何回?」

「…何回だった…か…30回?」

栗色はさも意外だ。という顔をした

「ふーん。意外と少ないな」

「…が去年。その前は覚えてない」

「前言撤回!!多すぎるわ!!なんだ覚えてないって!!」

栗色はいきなり怒り出した。吃驚だ

「えっ!?普通じゃないのか?皆もこの位だったぞ!!」

「それは見栄だ。絶対嘘だから」

「・・・そうだったのか・・・俺は多いのか・・・」

何気無くショックだ
俺は普通に生きたいのに…

「イケメンって…騙されやすいんだな」

「…結構傷付くって。いや、イケメンってなんだ…」

「はい。ありがとう」

栗色はタオルを返した

「あぁ…」

返されたタオルには血がべったりついていた
どんなに力を込めたら口内がこんなに切れるんだ

栗色は表情がコロコロ変わって見ていて飽きない。あの鉄仮面は自分を押さえていたようだ

こいつ…面白いなあ…

こんな…こんな奴が… トモダチ だったら…

「あ!!そうだ!!お前さ!!」

「…………え?」


俺はその時

嫌な予感がした

人間、悪い予感だけは当たるんだ・・・


 


 
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