涙心

□05:ときめきの恋心
2ページ/3ページ



「どうしたんだよ若宮?」

「え?!」

「ぼーっとしてたぜ」

「あ…。ごめん」


焦ったあたしは鉛筆を動かし始めた。



「お前ってさ、たまに変だよな」

「どういう意味さ?」


変って…。あたしを変態呼ばわりしないでほしい。
言うけど、ブン太の方が変態ですから。

なんて思ったあたしだけど、次のブン太の言葉で機嫌が一気に下がった。




「急にキレたり、わけわかんねえこと言いだしたり…変!」

「……」


変、か。あたし、変かな?
…変だよね。

だって今ブン太が言ったことは本当のことだし。
そう見られるのは当たり前だよね。





「…何か、悪い」


この空気で気付いたのか、ブン太が謝ってきた。



「別に、嘘じゃないから」


「その理由、教えてくんねえの?」
「やめやめ!この話もうやめよ?勉強に集中しないとっ」


「あ…ああ」


これを最後に、あたしとブン太は何も話さなくなった。
二人とも書くことに集中している。
だけど、時折ブン太がこっちを見ていることに気付いて、少し緊張した。










――書きながら考えていた。


どうしてブン太を見ると"アイツ"を思い出してしまうのか。
思い出すって言っても、顔とか背丈とかは全く覚えてない。ただ、雰囲気だけ。

"アイツ"とブン太って似てたのかな?


全然わかんないよ。




























キーンコーンカーンコーン


部活の終わりを告げるチャイムが鳴った。




「はあー、やっと終わったぜ〜!」

「だね〜…」


二人とも、ほぼ同時に机に突っ伏した。




「よし!先生にノート見せに行くかっ」

「えー、もう行くのぉ!?もうちょっと休憩してからが…」
「つべこべ言うなっつの!」

「え、ちょっ…」



ブン太に手を握られた。

あたしはそのまま手を引っ張られ、廊下に出される。


職員室に向かっている間に会話はなかった。



「……」


不覚にもときめいてしまった自分が……許せない。





次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ