募集用・テーマ作品

□嫌な事されても笑って許せるようになったら大人。
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その日、歓楽街のパトロールを終えた土方十四郎、沖田総悟の2人が真選組屯所へと戻ると、そこは今までにない異常な雰囲気に包まれていた。
いつもの喧騒は勿論、監察の仕事をサボって庭でミントンに励む山崎どころか、誰の気配も感じられなかったのだ。屯所の入り口を守る門番までいないとは、一体どうゆうつもりだろうか。
 
「‥‥皆んなして遊びにでも繰り出したんでしょうかねィ?」
くわえ煙草もそのままに、呆然としていた土方の隣りで、「追いてけ堀かよチクショー」と愚痴る沖田は、大して気にしていない風に頭の上で両手を組むと玄関へと歩を進めていた。その様子に土方の不安も少し和らいだものの、やはり根本的なところは何ひとつ解決してはいない。
大体全員いなくなるなど、大捕り物でもない限りあってはならないのが警察と言うものなのだ。
土方は周りを見渡し、視線の届く範囲に警戒を強めた。だがその間も気にせず玄関の中へと入ってしまった沖田の姿に、土方は漸く声をかけたのだった。
 
「‥‥おい、総悟ちょっと待て。勝手に行動す」
「うああああああッ!!」
 
その時、土方の声を遮るように、屋敷の中から沖田の悲鳴ともとれる叫び声が響いたのである。
敵か!?やはり罠か!?
土方は舌打ちをしながら玄関を目指しひた走った。
 
「総悟ォォォォオオオオオオオッぐおぉぉぉ!?」
 
健闘虚しく、とはよく言ったものだ。
玄関へと駆け付けた土方であったが、あと数歩と言うところで踏み出した足元がガクッと下がったのだ。
そして次の瞬間、その体は宙に浮かびそのまま落ちたのである。
一瞬の後、ドサッと尻餅をついた土方は、上から降り落ちてくる土煙に頭を振って耐えていた。
しかし、ふとその尻の下の感触に眉を寄せると、手を伸ばして確認をするのだった。
 
「こいつは‥‥」
 
手に触れた物、つまり落し穴の底に敷いてあった物は、なんと大量の段ボールの残骸であった。
人の手により適当に裁断されたらしいそれをひとつ持ち上げ、土方は訝しげに見つめた。
ここは何の為に、そして誰の仕業で作られたのだろうか??
背中に嫌な汗が伝わる。
沖田の事も心配だが、これではまるで自分を捕まえる為の策略ではないか。
土方は穴の底から空を仰ぎ見た。
4mはあるだろう地面との高さに、不安ばかりが積もってゆく。
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