ジョジョ暗チ中心夢

□変態出没注意!
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任務明けの私は猛烈に眠くて、ついついアジトのソファでうとうとしてしまっていた。

起きなきゃいけない…自分の部屋に戻らなきゃ。
ぼんやりする意識の中、そうは思ってなかなか体はついていかない。

もうちょっと、もうちょっと…と起きる時間を引き延ばすうちに、いつしか眠りに落ちていった。


…。

……。

…………。



…なんか、いる。
私は何者かの気配を感じてぱっと目を開けた。

暗殺者としての性。私は無意識の内にいつも隠し持っているナイフを素早く手に握って目の前の人物に向けた。


「おはよう、名無しさん」

そいつは喉元にナイフを突き付けられているにも関わらず、にこやかにそう言った。

「……メローネ」

とりあえず敵でないことは分かった。
しかし敵だったほうがありがたかったかもしれないと思うくらいの不快感。

「何してるのかしら?」

ナイフを構えたまま尋ねると、メローネは笑みを深めた。

「名無しさんの寝込みを襲おうと思って」

「…死んじゃえ!」

ナイフを突き出したが、その切っ先は彼の喉を突き刺す前に弾かれた。
ナイフが床に落ちる乾いた音と共に、右の手首がじんじん鈍く痛みだす。

「危ないだろ、刃物なんて振り回したら…名無しさんが怪我をする」

「…馬鹿にしないでよ」

メローネは私の手首を掴んで、口元に寄せる。

「赤くなってるな…」

ぺろりとその部分を舌で撫でられて、私は眉根を下げた。

「やめてよ、変態」

「変態に無防備な姿を晒す名無しさんが悪い」

その言葉にはさすがに返す言葉が無かった。
あの時這ってでも自分の部屋まで戻らなかった自分を呪う。


「名無しさん…」

いつの間にか手首から耳元に移っていた彼の唇が、私の名前を低く囁く。

「ちょ、ちょっと、ほんとに何してるのよ」

私は今の体勢に気付いてかなり焦った。
何せ私の体を覆うようにメローネが乗っかっていて、その上利き手はがっちり捕まれていたのだから。

「…何って…スキンシップだ」

「どこがスキンシップだ!どう考えてもスキンシップの域越えてるわよ!」

どうにかこの良くない状況を打開しようと身を捩らせるが、メローネは無駄だと言わんばかりにより強く体を近付けてきた。

「っ…」

「ベネ…とてもいい表情だ」

うっとりとそんなこと言われても全く嬉しく無い。むしろ気持ち悪い。

しかし、本当に危ない…。
このままだと為す術もなく襲われてしまう。

「名無しさん、そんなに怯えなくても大丈夫さ…優しくするから」

「怯えてないし、優しくもして欲しくないっ」

打開策、打開策…。
もういっそスタンドで攻撃してしまうか?

「痛いのが好みか…君が望むならそういうプレイも、」

「そういう意味じゃない!もう、どっか行って!」

いや、さすがにそれはまずい…私のスタンドは殺しにしか向いてないから。
あぁもう、どうしたものか…。


と、その時、ドアの向こうから小さく音が聞こえた気がした。
…メローネはまだ気付いてないらしい。

「名無しさん…」

「…ひゃっ…」

物音に気をとられて油断していた。
耳たぶをゆるく噛まれて変な声が出てしまった…ものすごく恥ずかしい。こんなやつに!


しかし音はだんだん大きくなっている…だれかの足音のようだ。
誰か戻って来たんだ!


私はこれしか無いと思い、大きく息を吸い込んだ。


「誰かたすけっ…んむ?!」

だが、最後までいう前に、私の声は抑えられてしまった。
目の前には私の寝込みを襲おうとしてきた変態の顔。近い、近すぎる。


…まさか、この距離って、つまり、よく考えてみると、私の口を塞いでる柔らかいものは。



「ん…んんーっ!!」

現実に気付いて絶望的な状況の私に追い討ちをかけるように、最悪のタイミングでドアが開く音が聞こえた。

「…お前ら…見せつけたいのか?」


ホルマジオの声だった。
呆れているような、ちょっと引いてるような声。

「もう、タイミング悪いな…せっかくそういう雰囲気になってたのに」

唇を離して、メローネはいけしゃあしゃあとそう言う。

「違う!断じて違うわ!襲われてたのよ、この変態に!!助けてホルマジオ!!」

メローネに殺意さえ覚えながら、ほぼ叫ぶようにホルマジオに訴えた。

ホルマジオは、本当なのかどうなのか…とかぶつぶつ言いながらもメローネの服を掴んで引っ張ってくれた。

「邪魔しないでくれよ、今からがイイとこなんだから…」

「死ね、この変態!本当に死ねっ!グラッツェ、ホルマジオ!!メローネなんか死んでしまえ!」

自由になった足で思い切りメローネを蹴りながら、思い付く限りに罵詈雑言を吐く。


「ベネ、いい蹴りだ!名無しさんは激しいのが好きなようだな!」

「気持ち悪い!死ね!!メローネなんか、大っ嫌い!」


絶対からかわれるから言わないけど、あれファーストキスだったのに!
こんな変態にあっけなく奪われてしまうなんて思ってもみなかったわ!!


私はふんっ、と息を鳴らしてメローネに背を向けた。

乱暴にドアを開ける私を追い掛けるように、ホルマジオのため息が聞こえた気がした。

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