ジョジョ暗チ中心夢

□ナターレ1
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ナターレが何さ!

私は苛々と、足早に帰宅を急いだ。

誰も彼処もナターレだからって浮かれすぎ。
道すがらすれ違うカップルを横目で睨みながら、ふんと鼻息をならす。

私だって、そういう相手がいないわけじゃない。
いないわけじゃないけど、そう、彼は忙しいから。多分。
でもね、私の誕生日にも祝いに来てくれない彼が今日に限ってに会いに来てくれるとも思えない。

…別に、期待してないし、いいもん。


息切れするほど早く歩いたため、いつもより大分早く家に帰れた。
ポケットをごそごそ探って鍵を取り出す。

ドアを開けたら明かりが点いてて、彼がいてくれたらいいのに。
なんて妄想じみた考えを頭を振って払い、ドアの鍵を開けた。

「ただいま…」

私の疲れた声に返事をする人はいない…当然だけど。

私は微かな望みさえ絶たれた気分で、真っ暗な部屋にあがった。
寒い、早く暖房つけなきゃ。


「おかえり、名無しさん」

突然耳元で聞こえた声に、私は息を呑んだ。
誰もいないはずの背後に、誰かがいて…え、何で?
思わず手に持った鞄とか買ってきたケーキの箱とかをどさどさと落としてしまった。

背後の誰かは私の首に紐のような何かを巻きつけてきた。
え、何、殺されるの?怖すぎて体が動かない。

「や…やだ…こ、ころさないで…」

声は聞いたらすぐ分かるくらいめちゃくちゃに震えていて、それに連動するように体も震えてきた。

「殺すわけないだろ?それより、そんなに怖がられるなんて…興奮するぜ」

恐怖からがたがた震える私にそう囁いた、誰か。
でもその台詞と声で、背後の人物が誰だか特定されてしまった。

「メ、メローネ…?」

それでも未だ半信半疑でその名前を呼ぶ。
と、ぱちっと軽い音がして、その時やっと視界が明るくなった。電気を点けてくれたらしい。

急いで振り返ると、そこにいたのはやっぱり、今日一番会いたかった変態。


「やあ、名無しさん、Buon Natale」

「やあ、じゃないよ!何で家の中にいたの?!何で真っ暗で首絞めてくるの?!怖いよ!!」

のん気な挨拶をしてきたメローネに食って掛かるように怒鳴る。
おかしいな。メローネに会えるなんて嬉しいはずなのに、何で怒らなきゃいけないのよ!

私の怒声にも全く悪びれた様子の無いメローネは、私とは対照的に笑みを浮かべながらわしゃわしゃと私の頭を撫でた。
…そんなんですぐにこにこすると思ったら大間違いよ!思いつつ緩む口元が憎い。

「ちょっとしたサプライズしてやろうと思ったんだが、やりすぎたみたいだな」

「大分サプライズだったよ、全く…で、これ何?」

首に巻きついた何かを指差して訊ねる。
正直絞殺されるかと思った。

「え?リボン」

「だから、何でそんなのつけるの」

外していい?と答えも聞かずに外そうとリボンに指を掛けた。
しかしすぐ手を押さえられて阻止された。

見れば、目の前にメローネの顔。

「俺のプレゼントだから」

「…は?」

近すぎる顔にどぎまぎしながらも平然を装おうと努力する。
そんな私の心を知ってか知らずか、メローネは悪戯っぽい笑みを浮かべて私の頬に一つキスをした。

そしてその唇を耳元に寄せて、そっと囁く。

「俺、ナターレのプレゼントはあんたがいればそれでいいぜ」

急上昇する体温。熱くなる顔。

こんなくさい言葉平気で言えるメローネってすごい。
でもそんな嘘くさい言葉でどうしようもないくらい嬉しい私もすごい。

「…名無しさんもそうだろ?」

ぞくぞくするくらい低い声で聞かれたら、そんなのもう、頷くしかないじゃん…。

「うん…私も、メローネがいればいい…かな?」

断言できない恥ずかしがり屋な私を許して。
メローネみたいにほいほいそんな言葉吐けないの。

「ベネ、それじゃ俺にもこれ巻いてくれ」

それでもメローネは満足そうに、私に巻いたものと多分同じであろうリボンを握らせた。
切れ端のほつれた、赤いリボン。

だけど、ともすれば指輪よりネックレスよりロマンチックな気もする。

「…何処に巻く?」

「どこでもいいさ」

それじゃあ、と私はメローネの手首にリボンを巻きつけた。
首でもいいけど、身長差があるから少し難しいし。

「ん、できた」

あまりうまく結べなくて少しくたびれたリボンを見て、メローネは笑む。
珍しいくらい邪気の無い優しい表情だった。

しかし一瞬後には、にやにやという表現が適切な笑みに戻っていて。

「それじゃあ、いただこうか」

私はてっきりケーキのことだと思って、先程落としたケーキの箱を拾い上げようと腰を屈めた。
これじゃ中身はぐちゃぐちゃだろうな…結構勢い良く落としてしまったし。

「ケーキプレイか、それもいいな」

「え?わ、ちょ!」

変なワードが聞こえたと脳が認識したと同時に、腰に腕が回されてそのまま抱え上げられてしまった。

…いただくって…私か!


「やだやだ、ご飯も食べてないしケーキも食べてないし!」

「今から嫌ってほど俺の」

「言うなー!!」



...Buon Natale!!

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