ジョジョ暗チ中心夢

□バレンタイン
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「名無しさん、愛してる」

ストレートな言葉と花束を突き付けられた私はびっくりして彼を見た。
だけど彼の目は思いの外真剣で、少し笑ってしまう。

だって真剣な目も真っ直ぐな愛の言葉も彼には似合わない。

「何だよ、笑うなよ」

言いながらも緩んだ彼の口元。
やっぱりメローネには変態的な笑みを浮かべたその顔の方がよく似合う。


「…どうも、お久しぶり」

差し出された花束をすぐには受け取らずに皮肉っぽく言ってやる。

メローネに会うのは本当に久しぶりで、私はもしかして忘れられたんじゃないかと思うほどだったから。
電話しても通じないし、メールも返ってこないし、私がどれだけ不安だったと思ってるんだこの変態野郎。

「怒らないでくれよ、色々忙しかったんだ」

「へぇ、そう。それはそれは、忙しい中わざわざ会いに来てくれてありがとう」

…別に怒ってない。

怒ってないけど分かって欲しい。
言いたくもない憎まれ口を言ってしまうくらい、ずっと会いたくて愛しくてしょうがなかったこと。

それに、久しぶりすぎてどう接していいのか分からないくらいドキドキしてる。

彼の目を見てられなくて顔を俯けると、薔薇の深紅が視界を埋めた。

「…ごめんな、名無しさん」

何よメローネなんか。
こんな、薔薇なんてもらったって。
寂しかった時間は埋まらないわよ…。

「泣かないでくれよ…、」

泣いてない、言おうとしたけど。
その時やっと自分の目が潤んでいることに気付いて唇を結ぶ。

すると目の前から赤が消えた。
花束が床に落ちた軽い音が聞こえるのと、自分の体が強い力で包まれたのは同時だった。

「襲いたくなっちゃうだろ」

耳元で囁かれて、思わず体が震えてしまう。

「…変態、ばか…」

抑える涙声で紡ぐ言葉は悪態ばかりで本当に言いたい言葉は喉の奥にひっかかって出てこない。
だけど大人しく抱きしめられてあげるから…分かってよ。


「名無しさん、今日何の日か覚えてるか?」

そのまま数分間静かな時が流れ、メローネが私の背中をくすぐったいくらい優しく撫でながら訊ねた。

「…当たり前」

拗ねたような小さな声でも、彼は満足そうにベネと呟く。

忘れる訳も無い、今日が何の日かなんて。
今日メローネが来なかったら、私はきっと彼のことなんて忘れるつもりだったもの。

「今日は1日中…今日の最後の一秒までずっと名無しさんを離さないから」

「…当たり前よ!」


時計は14日の零時半を指す。

私が作ったチョコレートとかクッキーとか、嫌ってくらい食べさせてあげる。
それから一生懸命選んだプレゼントもあるの。きっと似合うと思うから。


「...Mi ami?」

「Ti amo da impazzire!!」


(そして熱いキスを交わして。)


Buon san valentino!!

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