ジョジョ暗チ中心夢
□97%くらい嘘
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「ねぇメローネ、明日の夕飯何がいい?」
今日の夕食を食べた直後なのに、もう明日のメシの話。名無しさんは食器を片付けながら俺に問う。
「あぁ…何でもいいぜ、名無しさんが作ったもんなら」
俺がそう言うと、名無しさんは不満そうに眉を潜めた。
「駄目、明日はメローネが食べたいものじゃなきゃ」
「どうして?」
首を傾げて訊ねると、今度は呆れたようにため息を吐いた彼女。ころころ変わる表情に少し唇が緩んだ。
「…誕生日」
ぼそりと教えられた答えを飲み込むのに数秒かかった。
…あぁ、そうだ、明日を誕生日にしたのだった。
俺がすっかり忘れているのはおかしかったかな、だけど確か一回しか言って無いことを覚えている名無しさんだって変だと思う。
「ホントに忘れてたの?」
「あぁ、ここのところ忙しかったから曜日の感覚おかしくてさ」
嘘はすらすら出てくるけれど、吐いた嘘なんか一々覚えられない。
そこのところはプロシュートに詰めが甘いと言われても仕方ない。(だってあいつはそこまで完璧だしな)
「で?何がいい?」
「そうだなあ…」
実際何も考えてないけれど考える素振りだけしてみる。
名無しさんの期待するような表情が見たかったからだ…。
「…ミネストローネ」
そうしてまた嘘を吐いて、それを嘘だと知っているのが俺だけだと思うとぞくぞくする。俺だけが知ってる嘘で名無しさんが一喜一憂するのが面白い。
本当歪んでると思う。
「任せて、ミネストローネは得意なんだからっ!」
「名無しさんが作るやつが一番おいしいぜ」
付け加えた言葉に、名無しさんが嬉しそうに笑む。
何も知らず馬鹿みたいに微笑んでる名無しさんを見ると胸がほんの少しだけチクリと痛んだ。
…本当に食べたいものなんか言えないさ。
「プレゼントもデザートもちゃんと用意しとくから、出来れば早く帰ってきてね!」
「あぁ、楽しみにしてる」
そんな顔をされると、そんなことを言われると本当のことなど何一つ言えない。
全く、厄介な日を誕生日にしてしまったものだ…。
「名無しさん、」
本当に食べたいものを言ったら、明日ここに帰ってきたくなるだろ。
本当のことを言ったらあんたはきっと泣くだろ。
本当は名無しさんなんてある程度付き合ったらとっとと母体にでもしちまうつもりだったんだ。
そんなこと口が裂けたって言わない代わりに綺麗で適当な嘘ばかり吐き続けた。
でもそれはあんたといたかったからなんだぜ?
「何?」
…だけど一つだけ本当のことを言ってやる。
あんたには俺にとっての嘘も本当も全部等しく疑いようのないことなのかもしれないけど。
「あんたに会わなきゃよかった…」
言いながら抱き締めたからどんな顔したのかは残念ながら分からなかった。
(「愛してるんだ」)