ジョジョ暗チ中心夢
□色のない足跡
1ページ/1ページ
「誰かが亡くなったみたいね」
アジトまでの道中、思いがけず目にした葬列。
死んだその人のことは全く知らない。
だけど彼(あるいは彼女)が愛されていたということだけは確実に分かる。
大声で泣きじゃくる少女も、唇を噛んで涙を堪えているおじさんも、心が無くなったかのように虚空を見つめる青年も…誰もがその死を悼んでいたから。
「そのようだな」
隣を歩くリゾットは横目でその様子を見た後で一言そう呟いただけだった。
「私が死んだら…」
言い掛けた言葉は、後が続かず宙吊りになってしまった。
…きっと私が死んでも誰も見送ってはくれない。
多分葬られる先は闇で、生きていたことすら『無かった』ことになるんじゃないだろうか。
ヒトデナシだと蔑まれ、誰からも認められない暗殺者の末路なんて、そんなもんだ。
「私が死んでも、忘れないでね」
だけどせめてリーダーくらいは憶えてて欲しい。
ロクでもない人間だったけど、私が確かにいたということ。
「…」
返事も何の反応も無いから少し不安になって様子を窺ってみると、リゾットはじっと私の顔を見ていた。
しかし目が合うとふいと顔を逸らされてしまう。
「忘れようとしても、忘れられないだろうな」
リゾットの言葉に、私は目を丸くした。
てっきり「さあな」とか「どうだろうな」とか言ってはぐらかされると思っていた。
「何があっても『無かった』ことにはならないからな」
「…リーダー、読心術でも心得てる?」
思ったことを全部読まれているような気がして、冗談半分にそう訊ねてみた。
リゾットは前を向いたまま、「お前が考えそうなことだ」と。
だけど不思議だ。
リゾットが言うならそうなんだろうと、先ほどの言葉はすとんと心の底に落ちたのだから。
「…それじゃあ私も忘れられないよ、きっと、全部」
私はそっと振り返る。
見えるはずはないけど確かに残っていた、色の無い足跡。