暝夢への誘い
□優しい贈り物 ◎
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初夏の陽射しが爽やかな午後。
馬超は自室で執務に追われていた。
「(うぅん…どうにか抜け出す事は出来ないか…。)」
馬超は扉の前をチラリと見やる。扉の前では馬岱が仁王立ちで馬超を見張っている。
「若君、抜け出そうなんて考えてるんじゃないでしょうね?」
「いや?別に…。」
「隠しても無駄ですよ!若君は顔に出ますから。
今日は溜まりに溜まった執務、やってもらいますからね!」
…どうやら、抜け出そうにない。
馬超がこんなにも執務を抜けたいのには理由があった。
趙雲と出会って今日で二ヶ月。
この二ヶ月間、趙雲に何も贈り物をしていない事に馬超は気づいたのだ。
そんな訳で、どうしても今日中に贈り物を用意したかったのだが…運悪く朝から馬岱に捕まり、溜まった執務をさせられている。
このままだと、今日中に街へ出る事は出来なそうだ。