図書館戦争 二次創作
□一口交換のケーキW
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「ただいま」
「おかえり。笠原。さ、残りをさっさとやるわよ」
同室の笠原が明日官舎へと引っ越す。
こんな風におかえりと笠原を迎えるのも今日が最後
細々と残っていたものをダンボールに詰めていく。
寮生活のためさほど多くはないが、それなりの量にはなる
「この部屋ともさよならか…」
明日必要なものだけを残し、最後のダンボールを閉めた郁が呟いた
「笠原、冷蔵庫にケーキ買ってあるわよ。お茶にしましょ」
「ほんとー?柴崎が?」
「餞別よ。好きな方選びなさい」
冷蔵庫を開けると入っていたのは柴崎と初めて一緒に食べたお店の箱。
箱に入っていたのは桜のモンブランと苺ショート
「うー。迷う」
「一口交換すりゃいいじゃない」
郁は長考の末苺ショートを選んだ
「あんたが人妻ねー」
交換した一口を口に運びながら柴崎はまじまじと目の前の郁をみた。
出会った当初に比べると格段に綺麗になった。
自分とは違う、愛すること、愛されることをしった内面からでる綺麗さだ。
堂上と出会い、付き合うようになった。
体を重ねることもしていて、結婚もする。
階段を上っているはずなのに、郁は郁なのだ。変らないなにかがある
「何よ。あたしが結婚しちゃいけないの?」
ぷーと子供みたいに頬を膨らませながら、ケーキを頬張る郁に寂しさを感じる。人妻という言葉がこれほど似合わないこもそういない。
「そうじゃなわよ」
まだ熱い紅茶に息を吹きかけながら啜る。いつもと同じはずなのに苦く感じるのは気のせいだろうか。
美味しそうにケーキを頬張る目の前の彼女
くるくると変る表情を同期として、同室として、そして親友としてずっと見てきた。