オリジナルなのかクロスオーバーなのか?な小説たち
□恋の終わりから始まりまでをMTBに乗っけて
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「はぁ」。
溜め息を吐く一人の青年。
「あぁ何でやねん!!」
あ、叫び出した。遠くで小さなお子様が指差している。
いったい彼の身に何が起こってしまったのだろうか?
それは数時間前に遡る。
夕暮れの教室。そこには彼ともう一人女の子がいた。まぁ、典型的な告白の場面である。そして答えは勿論。
「ごめんなさい。そう言う風に見ること出来ないから」。
彼は玉砕した。そりゃもうばっちりと。よくあるラブコメディのように「あんた何て嫌い」バチーンよりはまだましだがね。
そして現在に至る。
傷心した彼はとぼとぼ歩いていた。
ふと顔を上げるとちょうどサイクルショップが目の前にあった。
(チャリかぁ、気晴らしに良いかな)
と軽い気持ちで店内に入った。バイトをしているから金はそこそこあった。まぁ特に趣味とかも無かったから金は貯まる一方だった。
店内に入ると色々なチャリが目に入った。
ゴツいタイヤのMTB、スマートでドロップハンドルのロードバイク、フレームのデザインが洗練された。モールトン。
だが、どれも値段がよく目にするママチャリとは桁が違った。
しかし、彼はスポーツバイクの魅力に引き付けられた。
「いらっしゃい。何かお探しかな?」
奥から店主なのだろう、白髪の長髪を後ろで束ねた初老の男性が出てきた。
「自転車を趣味にしようと思うんですけど、色々あって迷ってるんです」。
彼は店主に告げた。
「ふむ、どういう風に乗りたいのかね?」
「山道とか走ってみたいですね」。
「それでは、コレなんかどうかね?」
店主が店の奥から一台のMTBを出して来た。
「どうだい、トランス3。フルサスのMTBだ。片落ちしたヤツだから安くしとくよ。まぁサイズがあえばだけど」
「本当ですか?」
彼は早速そのMTBに跨がってみた。
「ぴったりだね」
彼が来るのを待っていたかのようにトランス3のフレームサイズは彼にぴったり合った。
彼は正に電流が走ったかに思えた。
(俺が求めたのはコイツだったのか…)
「コイツを俺、買います」
「8万だけど良いのかい?」
今年のモデルの価格を見ていたから彼は逆に良いのかと思った。何故なら2010年モデル価格は21万もするからだ。
「はい」
「今日は持ち合わせが無いだろ。コイツは取り置いておくから」
「よろしくお願いします」
これが彼、高崎一彦とトランスとの出会いだった。