‡ZERO‡

Act.13 白雪姫は拳銃がお好き?
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なぜ、そこまで畏怖を覚えるのだろうか。貴族にしか分からないこともあるのだとは思うが、これではアレクサンドルが見世物のようじゃないか。そこまで考えてムッとする。拳程度開いていた距離をぴったりと埋め、自分の身体でアレクサンドルを隠そうと試みる。だが、自分の頭上から降り注ぐ視線により、その身体が全く隠れていないことを知った。

「何を引っ付いているんだ」

「だって…」

だって、ひどいじゃないか。ちらりと視界に入れて、ある人はわざとらしいほどの賛美と挨拶を並べ、ある人はこそこそと何かを呟く。人と関わりあう以上避けて通れぬ道だとしても、アレクサンドルの場合向けられる視線の数が尋常じゃない。しかも、相手は同級生。対等であるはずなのに。
一言呟いたっきり俯いてしまっているホウプを見て、アレクサンドルは暫く怪訝そうにしていたが、やがてホウプの腕を掴んだ。

「視線なんて気にするな。お前のことを何も知らない奴らの戯言なんて放っておけ」

そう言うと、アレクサンドルはホウプの腕を掴んだまま足早に廊下を歩いた。
そういうわけじゃなくて。自分のことは慣れっこだから気にならないけど、アレクサンドルがそういう目にあうのは嫌なだけで。喉まで込み上げる言葉が出てこない。嬉しさやら恥ずかしさやらで喉が詰まってしまってるんじゃないか。どうしよう。嬉しくて泣きそうだ。
居た堪れなさや嬉しさで顔を真っ赤にして俯くホウプの前で、アレクサンドルも恥ずかしさで僅かに頬を高揚させ、それを気づかれぬようにとにかく早足で歩いた。
その光景を見ていたルーシャは、隣にいるリリィに向かって小さな声で言う。

「…仲良し」

「ふふ、お互い親友なんて初めてだから照れくさいのね」

でも、廊下の真ん中で青春されるのは見ている側にとっては毒でしかないからやめてほしいわ。続く言葉を胸の奥へと押しこめ、リリィはルーシャの手を握りしめ教室へと向かった。
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