‡ZERO‡

Act.13 白雪姫は拳銃がお好き?
3ページ/23ページ

お互い赤い顔をしながら席についたアレクサンドルとホウプを、同級生達がさも怪訝そうな顔をして見やっている。今しがた音楽室から一緒に出てきたばかりだったはずだが、ものの数分間で何があったんだと言いたげな顔だ。
凸凹コンビ、一目置かれる貴族と最下層の庶民、そしてその見た目のせいで無駄に視線を集めているというのに、また何をやらかしたんだと同級生達の視線が問う。普段なら何も気にしない同級生達だが、文化祭を前に変に注目を集めることはやめてくれと言いたいのだろう。ここの文化祭は、クラス対抗となっており、全学年全クラスで一番の売り上げを出したクラスが優勝となる。それは、経済学を学ぶにはうってつけであるし、人間関係を円滑に進める方法、そして需要と供給を本格的に体験できる機会なのだ。だからこそ、そこで優勝しておけば、自らの優秀さを周りの貴族に知らしめる絶好の機会になる。というのは建前で、優勝したクラスの生徒は文化祭が終わるまでに意中の人に告白すると 結ばれるという噂が実しやかに囁かれているのだ。貴族の恋愛事情は、いろいろ陰謀が張り巡らされた泥沼劇場の場合もあるため、あまり突っ込まない方がいい。
今日は、本格的に文化祭の準備に向けて取り組む時間が設けられた最初の日だ。だからこそ、同級生達は過剰になっている。
しかし、噂にも興味がなく、現在興味を向けている対象がお互い同士であるホウプとアレクサンドルにとっては、文化祭は行事であり力をいれて臨むべきものだとは認識していても、他の同級生達と違い切羽詰まったような気迫がない。
初めての友達というものにまだ慣れず、気恥ずかしさや嬉しさ、そして嫌われないだろうかという不安を抱いたまま、どこまで踏み込んで許されるのかを見極めるため、ゆっくりゆっくり近づいている最中なのだ。いうなれば、うすら寒く気恥ずかしい青春真っ只中を浮遊している。
人様の青春具合など知りたくも見たくもないのに、強制的に見せつけられている同級生達は、いい加減慣れて適当に友達関係を築いてくれと今日も願う。

「はーい、みんな席について」

教室の空気を変えるように、がらりとドアを開けて入ってきたのはリリィだった。そして、その後ろからルーシャも続けて顔を覗かせる。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ