SECRET

□S A K U R A I R O
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「見て見て!跡部君!あっちも綺麗だよ!」
『あーん?』
「もーそんな顔しないでよ〜。せっかく花見に来たんだからぁ〜」
『お前が悪いんだろ』
えー、とこのお気楽野郎は横でふて腐れ顔。


* S A K U R A I R O *

今日は別に会う約束なんてしていなかったのに、いきなり千石から電話があって何事かと思えば、花見に行こうだと?
行かねぇと断ったが、しつこく駄々をこねられ結局連れて来られた。
そんな俺をほったらかし、千石は上機嫌でシートを広げ、着々と花見の用意をしている。

『だいたい花見ぐらい俺様の家の庭でいいだろ?』
「だって…跡部君ん家の庭だと執事さんとか居るじゃん」
『あ?』
「執事さん達が居たら何か固っ苦しいし、それにせっかくの花見だからどこか違う所に行って、俺が用意したかったんだよね」
まぁ用意って言ってもこのぐらいしか出来ないんだけどね、とシートに座って笑っていた。

『ふ、お前らしいな…』
素直にそう思った。
「へへっ」

俺がシートに腰を下ろし、周りを見渡すと庭の桜には劣るが綺麗に桜が咲いていた。
『外の桜もなかなか綺麗じゃねーか』
「でしょ?俺もこの辺では此処が一番綺麗だと思ったんだ☆」

『…で、お前は花見にきたんだろ?』
「え?」
千石はさっきから笑顔で俺を見ていた。
『え?じゃねーよ。桜見ねぇで何見てんだ』
「いやぁー桜も綺麗だけど跡部君も綺麗だと思ってさ♪」

…相変わらずこいつは…
不覚にも顔が熱くなるのが分かった。
「あれ?顔が赤いよ?」
こいつの言葉で顔が赤くなったなんて俺様のプライドが許さねぇ。
『日焼けだ…』
「マジ!?俺日焼け止め買ってくる!」
そう言って直ぐに桜並木の坂を下りて行った。千石の慌てっぷりについ笑いが出た。

『ばーか』
今更、買いに行ってどーすんだよ。
それにしてもあいつが居なくなると一気に静かになったな。
ため息をついてシートに仰向けになった。
自然と目に入ったのは青空に華麗に舞う桜吹雪。
毎年見る光景だが今年は一段と綺麗に見えたのは、あいつのお陰かもしれない。

…あのばかが帰って来るまで一眠りするか。
今日ぐらいは特別に待っててやるよ。
あの桜並木の坂を息を切らし駆け上がって来るあいつを想像すると、また笑みが零れた。



Fin

■あとがき
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