藍唄2

□41†芽吹いて逝く
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不穏な音が聞こえる


物を叩くような、肌を打つような、肉が裂けるような。
何とも取れて何とも取れない音が。


それに混じり人の声も聞こえるような気がするのだから、耳に入れてしまった人々は首を傾げるばかりである。

気にはなる。けれど知っては、見てはいけないと脳が命令を下すのだ。好奇心に負けて命を落としてはいけない、と。



また音がする。




バシィンッ



「ふぁあっ!」



ビシッ ビビッ



「ひぎっ! あぅ!」


『嬉しそうね恭弥。そんなに新しいオモチャはいいのかしら』


「はっ、ぅぐ! んんっ!」


『返事も出来ないぐらい、ね』




壁に手をつき、さらけ出された背中をアリアに向けている少年。この並盛において知らぬ者なしと謳われるほどの“力”を持つ雲雀恭弥である。


普段のケンカであれば掠り傷一つ負わない彼の背中が、今は見るも無惨なことへとなってしまっていた。


線状の赤いミミズ腫れが幾つも出来ている。目も当てられない痛々しい状態を作り上げたのはアリアに他ならない。



サディストというものは困ったものだ。他人を傷つけていながら罪悪感の一つも抱かないのだから。

夏という季節に不似合いな、黒いグローブに新品の鞭を巻き付け、張る。




『素敵でしょう?この鞭。 イタリアで手に入れたのよ。元は軍が拷問用に使ってたモノをSM用に改良したものらしいんだけど。イイ買い物をしたわ』


「は、い…っ」




サファイア・ブルーの瞳が楽しそうに見つめるのは、手中の鞭。その表面。

よくよく見ればそこには細かな砂粒のようなまとわり付いていて。粗めの紙やすりのようだった。
コレで肌を打たれればどれほど痛いか、体験しなくても想像がついた。


そしてそれ故にアリアがグローブを嵌めているのも納得出来る。



そんな、見るからに痛そうな鞭を味わった雲雀はひっそりとしっかりとその痛みに酔いしれていた。



マゾヒストというのも困ったもので。
傷つけられたというのにそれに快感を見出してしまうのだから。


こと雲雀は重症だった。主人であるアリアに与えられる痛みならば心にであろうと体にであろうと嬉しくて仕方なくて










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