花が咲く頃に
□僕の眠り姫
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左手でぎゅっと自分の胸、つまりはワイシャツを握りしめながらしばしその場で停止
京子が起きるかと待ってみたが…
『…あら?』
一向に起き上がってくる気配無し
落ち着いてきた心臓から手を離して、そろり
再びソファを覗き込めばぴったりと目を閉じている京子
眉間のシワも消えていて、もう一度夢の世界へ旅立ったようだ
『(よかったよかった…)』
安堵のため息を吐いて、そっとソファから体を離すと目の端に見慣れた三毛
正体が何か分かっているので、ビビることなくそっちへ向けば愛猫コウタロウと目があった
あ、そういや駅前のペットショップで新しいエサの試供品もらったんだった…。後であげんべ
その心の声が伝わった知らないが、なんとまぁ困ったことにコウタロウさんったら
にゃーんっ
『(ぎゃぁぁぁぁぁ!)』
いつもよりやや大きめの声で鳴きやがった。
ちょっとコタちゃん女の子がはしたないとか考えてる場合じゃねぇぇぇ!
もう自分で自分を褒めたいくらいの勢いでコウタロウを抱き上げて、一歩下がって京子へ振り返る
「ん、んん…」
『(やっべ、今度こそ起きるか?)』
暑くもないのにじんわりと汗が滲む
まばたきもしないで京子を見ていれば、ゴロンと仰向けになってまた寝息を立て始めた
ホッと一安心
いや、別に起きて欲しくないとかじゃねぇけどせっかく寝てるんだし…
それにいつも家事やってもらってんだ
こういう些細な休息くらい、取らせてやんねーと
にゃあ
『コタしーっ。京子寝てるから静かにな』
抱き上げたコウタロウを見つめながら小声で注意
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