腐敗した君に亡骸

□月明かりの晩餐
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けれど、パックリと開いた腹部がその考えを払拭させた


立ち込める血の匂い

瞳に映る赤の世界

現実を感じさせないような絵



それら全てにエクスタシーを感じたのか、佇んでいた“何か”はハァ…ッと熱のこもった息を吐き出した



その“何か”の正体は男だった

端正な顔立ちだったのだろうそれも、酷いぐらいに血を浴びていてよく分からない


顔と同じくらい血の付いた手で、履いていたズボンの後ろポケットからぐしゃぐしゃに潰れたタバコと安っぽい100円ライターを取り出した


そしてタバコを1本口にくわえ、火を点ける。小さなライターの火に、血に濡れた顔が照らし出されより血の赤を鮮明に

男の顎から血が一滴垂れ落ち、足元の血溜まりに波紋を広げた




ライターとタバコを再びポケットにしまい、くわえたタバコを人差し指と中指の間に挟み、肺いっぱいに吸い込むとスッとタバコを口から離し夜空へ向かって紫煙を吐き出した


白い煙が昇り、やがて霞んでいく


タバコの先端にたまった灰をポンと落とせば、赤い血溜まりにパラリと舞い落ち

散った灰はさながらスパイスの胡椒のようで


男も同じことを感じたのか、それを見てニタリと笑うと踵を返し歩き出した。次第にその姿は闇に溶けゆき



後に残された凄惨な状況をまざまざと見せつけられた月が、悲しむように星を一つ流した









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