水星の人魚

□彗星の鱗
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某月某日。
天気は雲の多い晴れ、気温は上々。上着なしでも大丈夫。

現在地は並盛海岸。シーズンオフな為か、今はランニングや犬の散歩に来た人ぐらいしか人目はなく。


彼にとって最良の探索日和と言える




「(迂闊だったぜ… まさか、並盛にもUMA伝説があったなんて!)」



滑り止めのラバーが付いた軍手、それを手にはめながらグッと握りしめた。


彼、獄寺隼人は本日UMAを探すためわざわざこの並盛海岸へと足を運んだのだ。愛読書が「月刊・世界の七不思議」なだけある、と言えば良いのだろうか


一体全体、どこから誰からそんな伝説を聞きそして発見しようとまで至ったのか…。彼は意外とロマンチスト、なのかもしれない



UMA伝説の載った資料を片手に握りしめ、何が入っているのか背中にはパンパンのリュック、口にはいつもの煙草

大変に近寄りがたい雰囲気の漂う獄寺だが、その雰囲気とは裏腹に表情はとてもキラキラとしていて。年相応の少年らしく見えた




「えーと、確かUMA… 人魚が目撃された事があるのはあっちの岩窟か…。まずは行ってみっかな」




バラバラと、資料のページをはためかせ伏せんを貼っておいたページを見て、自分の立ち位置から見て右奥にある岩場を確認する。


目の前の砂浜とは違いそちらはゴツゴツとした岩場になっていた。転んだら血が出てしまいそうだ。

そんな目に合わないように、慎重に足場を踏んで岩壁にポッカリと開いた穴のような岩窟へと。伺うようにヒョイと覗き込んで様子を見てみる


今のところ変わった物事は見つけられないが…。何か手がかりがあるかも、と岩窟に入り込む

人があまり踏み入ったことの無さそうなそこ


人1人がどうにか歩けるほどの狭さの足場の真横は海水がたゆたっていて。ほの暗い岩窟内に陽光が差し込み、より一層海水の透明度を上げた


これなら何かがいてもすぐに分かりそうである








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