水星の人魚
□淡水パールさながら
3ページ/3ページ
べちゃり、海水で濡れた岩場に果物の食べかすが落ちる。
落とした張本人は新しい果物を夢中で頬張っていて
黙々と果物を食べる姿を見て獄寺は思う
「(人魚の好物って果物だったのか…)」
美味しそうに食べるのだ、まず間違いないだろう。
しかもご丁寧に、他に持ってきていたショートケーキのイチゴのみ食べていた。
何を食べるのか分からないので、お菓子や果物や野菜と色々持ってきたが…。
どうにかその中に食べれる物があってよかった
「美味いか?」
『(もぐもぐもぐ)』
「…まぁそんだけ食うんだから美味いんだよな」
言葉が通じないどころか喋れ… ないのかは分からないが会ってから一度も声を聞いていない。
おとぎ話などでは歌を歌い、船乗りを惑わせたそうだが。
それはあくまでおとぎ話、実際目の前にいる彼女は到底そんな事しようにも見えない
ジロジロと眺め、様子を見ていれば不意にこっちを向いて
目が合えば蕩けるような笑顔を送られた
「…っ!」
『(もぐもぐもぐ)』
しかしそれも一瞬。
すぐにまた手の中の果物にかじりつく
とっとっとっ と速くなる心臓を抑えて思う。
前言撤回、おとぎ話は真実だ。
淡水パールさながら
.