水星の人魚

□海へ恥じらう
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人魚と出会い早幾日。あの何とも言えないしょっぱい出会いを果たした獄寺と人魚であったが、何と驚きなことにあれから毎日のように獄寺は人魚に会いに行っていた。

彼女の好きな果物を片手に。



やはり人外の生き物であるという事が獄寺の好奇心を盛大に擽り。

通い、会い、一方的にだが話をする中で人魚がどういう生き物なのかをじっくりと観察していた。


そしていずれはメディアに、と考えていたが毎日のようにこうして会っていれば情が湧いてしまって

今ではその考えも大分と少なくなってしまった。



ほんの少し緩んだ表情で、摘んだ桜貝をぽちょんと海中へ落とす。

そうすれば数十秒後、海中に落ちたそれを拾い上げた彼女が海から姿を現し。


数日の間に必死な思いをして獄寺が教えた合図だった。自分以外の人間の目に人魚の姿が触れたらどうなるか―。


それを考慮してのことだ。




ざぱっ




「…よぉ、元気にしてたか?」




ぱたぱたと海水を滴らせ岩場に上がる彼女にそう声を掛ければ、にっこりと笑みを向けられ。

まだ喋ったことはないが、どうにかこうにかコミュニケーションを取れるようになった。


とは言っても、獄寺の言うことに首を傾げたり笑ったりとその程度なのだけれど


ガサ、とビニールを鳴らせば彼女に笑顔が咲いた。




「ほらよ、今日はりんごと桃とオレンジ持ってきたぜ。…それと、コレもだ」


『 ? 』




ころころと岩場に並べる果物。その色とりどりさと潮風に混じって鼻孔に流れ込む果物の豊潤な香りにキラキラと瞳を輝かせる。


しかし付け足された獄寺の言葉に首を傾げて彼を見る。



早くも手にはオレンジを持って。



『食べたい』という意思表示をしてみせるが、ちょっと待てと手で制され。


むぅ、と頬を膨らませるが獄寺が取り出したモノを見てすぐに萎み。









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