藍唄2
□40†君がいなくちゃ始まらない!
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夏休み、他に教員がいないからこそ出来ることだ。
黒髪が災いしてか、夏の陽射しをたっぷりと吸収して頭部が熱い。
一刻も早く涼みたいと考え、少しばかり足を速くする。と、ついに目的の場所が目についた。
ほんの2週間ほど来ていなかっただけで何故だか随分と懐かしい。
一般生徒なら2週間どころじゃなく滅多に来ないところだが
応接室と書かれたプレート。その下にあるスライドドアに手を伸ばし、一気に横にスライドさせた
ノックをしないのは愛嬌
さて、部屋の主はいるかと中に一歩踏み入れば
『あら… 恭弥?』
「すー…」
『寝てる…。』
備え付けられた革のソファで横になり眠っている雲雀の姿が。程よい温度に設定された冷房のおかげで、とても心地よさそうだ。
微塵たりとも汗を掻いていない。
『イイご身分ね…。私はこんな暑い思いをして来たっていうのに』
ムッとした表情で雲雀を見下ろすアリア。彼女がそんな厳しい顔つきをしていても、雲雀は変わらずすやすやと眠っている。
よし、叩き起こそう
そう考え雲雀に手を伸ばすが、寸前でその手は止まった。
何やら考えついたようだ。
『…よし、どこまでやったら起きるか試してみましょう』
ニヤリと笑うアリアのそれは、あくどいとしか言いようがないものだった。
そうと決めたアリアはまず手始めに雲雀の頬をつついてみる。夏休みという長期休暇を有効に使っているのか、その指先はミルキィブルーに彩られていて。
夏を感じさせる爽やかなものだった。
つんつんっ
「…すー…すぅ」
『まぁこの程度じゃ起きないわよね。それだと私も楽しくないもの』
さして何も変わらず眠り続ける雲雀。
昨夜はあまり寝れなかったのだろうか。
さて、と小さく声を漏らして、雲雀の全身を軽く見やると続いて仰向けで寝る彼の腹の上に乗っかった。
一息に体重を乗せるのではなく徐々に。
「う゛…っ うぅ…っ」
『なんだか随分と失礼なリアクションね。けどまだ起きなそうだわ』
腹部に重く伸し掛かる重みに、表情を一変させうんうんと唸る雲雀。眉間には深くシワが刻まれ、少しばかり脂汗が滲んでいる。
アリアはどちらかと言えば軽いほうなのだけれど。
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