藍唄2

□41†芽吹いて逝く
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彼女以外には考えられない。自分の主人は。


堪らない興奮、登りつめる快感、―…そして滲む恋心。
最後のことに関しては、雲雀本人気付いていないけれど。



再びアリアが腕を振り上げる。けれどそれは頂点に上ったところでピタリと止まってしまった。




『…恭弥。今日はもうこれぐらいにしましょうか』


「え、どうして…!? 僕、まだ…っ」


『だって恭弥の背中、一面真っ赤なんだもの。それじゃつまらないわ。真っ白な、綺麗な背中に痕を付けるのが楽しいんじゃない』


「でも僕は…!」


『まぁ恭弥は叩かれれば楽しいでしょうよ。それがMだから。でも私は楽しくないの。こういうのはギブアンドテイク。どちらかが飽きたらお終いにするのがベストだわ。そう思わない?』


「…はい」




主からの言葉に渋々といった感じで雲雀は頷く。


言ってしまえば、主従関係にあるのだからわざわざ言い聞かせる必要もない。一方的に高圧的に終了させればいいことなのに。



納得出来ていない風な雲雀にくすりと笑うと手慣れたように鞭を纏め、“そういった”道具ばかりを入れるトランクにしまう。


チラリと見えた中身はノーマルな人間には名前も用途も分からないようなモノが敷き詰まっていた。

少し雲雀の心臓が跳ねる。




『恭弥、ソファに座って』


「はい」




痛む背中を押してソファに座れば、同じようにソファに座るアリア。


隣に座った彼女に背を向けて、きゅっと唇を噛み締めてアリアのアクションを待てば背に冷たく湿った感触。

そしてピリピリとした小さな痛み。


消毒液を染み込ませたコットンで、肌を拭いていたのだ。
SMの後に、必ず行われる行為。




『ふふふ、スッゴく綺麗に痕付いてる。素敵よ恭弥』


「…っ あ、りがとうございます…っ」




彼には見えていない。背後の彼女がうっとりと、恍惚とした表情で消毒していることなど。



密かに、アリアはこの瞬間が好きだったりする。

自ら傷つけた肌を、体を、また自分の手で手当てして。そうしてまた傷つける。その繰り返し。
永遠に行われるSMのようで。












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