「クジャー」 「…君か」 僕の部屋に突如としてやって来たこの子は少しおかしい子だ。カオス軍のくせにやたらコスモスの連中と絡んでいたり、気さくに誰にでも話し掛けたり(確かカオスとも話していたな)、カオス軍にはない暖かみを持った子だった。じゃあ何故カオス軍にいるのかと聞いても本人もわからないといった感じだ。あまり気にしたことはない。 「おぉ!クジャお化粧中だ!」 クジャきれー、と笑う君はやっぱりカオス側には不釣り合いだ。たまにその笑顔を崩したいと思う。けど崩してはいけないと思う僕もいる。この娘に関しては矛盾だらけだった。でも、その笑顔には触れていたかった。 「君もしてみるかい?」 「えーいいよ。わたしクジャみたいに綺麗じゃないよ」 「君だって年頃の女の子だろ。興味の一つくらいないのかい?」 「んー、ないこともないけど、お化粧なんてやったことないからどうやるのかわかんない」 僕の意見としては素材は良い方だから化粧をしたらその素材はもっと活かされると思う。白くてきめ細やかな肌はきっと映えるだろう。 「僕がしてあげるよ」 その肌に、触れたいと思った。 「うひゃっ、くすぐったい!」 「ほら、じっとして」 「むー…」 鏡の前に座らせその肌に筆を走らせる。きらきらと輝くパールはやはりその肌に映えていた。目は既に完了済みだ。黒のラインを薄く入れ、目尻にかけてほのかなピンクをのせる。睫毛も上げた。残りはそのやわらかそうでおいしそうな唇だ。 「クジャいつもこんなのしてるの?」 「僕の美しさをより一層引き立たせるためにね」 「ふーん。まぁそのままでもやっぱりクジャは綺麗だね。軽くショック受けるよ。憎らしい!」 「僕が綺麗なのは当然だね、嫉妬するのも無理ないよ」 「なるしー」 他愛ない話をしながらピンクのグロスをつけて終りだ。全体的に白い肌に合った薄めの化粧となった。 「目を開けていいよ」 「…うはー、すごーい!さすがクジャー!私好みにかわいいっ!そんなケバくない」 はしゃぎだす彼女を見て自然に口許が緩む。彼女は自分好みとは言ったがこれは僕の好みでもある。 「まあ、それらしく見えるじゃないか」 「素直にかわいいって言ってよー」 「僕には劣るよ」 「そんなのわかってるもん。クジャより綺麗になろうなんて無理難題だね」 「賢明なことだよ」 また彼女は鏡に向き直り自分の顔をじっくりと見る。段々とその顔は緩んでいき僕の方を向いて、その可愛らしい唇から紡がれた言葉。 魔法みたいだね (その唇にひとつキスをした) (そしてきみは笑う その笑顔は誰よりも綺麗だった) |