世界の悪戯
□紅い悪魔
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城のわりにはあまり華美とは言えない石造りの部屋に、男は入ってきた。
華美で無いとはいえ、ここは王の居城。
広さはだけは十分にある。
その殺風景な部屋の数段高くなった位置に、この城の中では珍しく感じる豪奢な椅子が二つほど並んでいた。
そこに座した王と思われる人物に、男は深々と頭を垂れると、それまでのあらましを簡潔に伝える。
王らしき人物はくっくと喉を鳴らすと面白そうにその瞳を歪めた。
「……そうか、とうとうやって来たのだな。リーナ。
良くやった。お前はもう下がって良い。」
「はっ!」
上機嫌で言う王に、更に深くその身を折ると、その身を翻した。
そして、足音を高らかに響かせ自室に入ると、それまでの誇らしげな表情をさっと消し、毒づく。
「……愚かな王。せいぜい今のうちに喜ぶがいいさ。」
男は口の端だけで笑みを作り、黒色の上掛けを放ると、ベッドに体を沈めた。
――剣呑な光が宿る瞳を、そっと閉じながら……。