1st

□君まで穢れてしまうから
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「アレルヤ!!」

ああ、ほら。
貴方はやさしい人だから。
やっぱり来てくれるって思ってた。

人革連の軍勢を辛くも退けてなんとか戻ったトレミー内。コックピットハッチを開けるとすぐに駆けつけてくる貴方がいた。
憔悴して緩慢な動きの僕をその力強い両腕で掻き抱いてくれる。
「…無事でよかった…。予測時間を越えても戻らねぇし、通信は使えねぇし…。おまえに何かあったら俺は…、俺は…っ…」
「ロック…オン…」
肩越しの苦しそうな声音が、抱きしめる強い腕が。
本気で僕のことを心配してくれていたのだと如実に伝えていた。
…ああ、やさしい人。
こんなにも。
こんなにも、いとおしいのに。
「…離して…」
「アレルヤ…?」
腕を伸ばして軽くロックオンの胸を押すことで、離れたくない甘くやさしい拘束を自ら解く。
「…駄目だよ…ロックオン。貴方みたいな優しい人がこんな人でなしをかまっちゃ…。もう放っておいてほしい…」
ロックオンの顔を一度も見ることなく床を軽く蹴り、その反動で無重力の中、背を向けようとした。けれど。
「なっ…、待てよ、アレルヤ!」
逃げかけた僕をロックオンは素早く捕らえて今度は後ろから抱きすくめた。
こめかみに、頬に、貴方の吐息と熱い唇の感触を覚える。
「…っ」
ほら、やっぱり。
貴方は僕が貴方から逃げることなど許してくれない。捕まえて離さないでいてくれる。
こんな、僕、でも。
こんな、僕、なのに。
ああ、どうしてこの人は。
こんなにも残酷なまでにやさしいんだ。
「…さっき、コックピットで泣いてただろ? 何があった? …おまえが独りで泣いているのに…放っておけるわけないだろ…!」
「…っ…、ロッ…ク…オ…」

ああ、駄目だ。
このままでは僕はこの人のやさしさに縋ってしまう。
「僕」と言う残虐な罪に巻き込んで穢してしまうんだ。
いやだ。いやだ、いやだいやだいやだいやだいやだ。
そんなのはいやだよ。

「アレルヤ…、アレルヤ…。泣かないでくれ…アレルヤ…」

ああ、僕は愛しいこの人までをも貶める。本当にどうしようもない人でなしだ。







 

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